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by aru-henshusha

『転職は1億円損をする』の著者は、タイトルで300万円損をする?!

c0016141_051262.jpg一読しただけでは意味不明な見出しでしょうが、その説明についてはおいおいと。

今回紹介する本は、担当編集・著者共に自分の知人という、書きやすくもあり、書きにくくもある一冊です。

転職は1億円損をする

さて、どこらへんから攻めようかと思ったのですが、やはり、このタイトルにふれないわけにはいかないでしょう。


この『転職は1億円損をする』というタイトル、事前に著者から聞かされた時点では、なかなかいい題名だと思いました。

新書というタイトル勝負のジャンルでは、これくらいインパクトがなければ目立たないし、「1億円」という具体的な金額が入っているのも、読者の興味をそそるはず。

しかし、同時に心配していたのは、どこから1億円という数字をひっぱってくるのか、でした。

新卒から同じ会社に勤め続けた人と、安易に転職を繰り返す人で、本当に1億円もの差がつくのか?――それは普通の読者なら、当然気にするところでしょう。


で、結論から言うと、「ちょっと無理しすぎ」。
これは著者の知人ということを割り引いても、突っ込まざるを得ないかと。

たとえば、この本では、転職なし/ありのサラリーマンの交通費を次のように計算しています。

・転職なし:津田沼在住、会社最寄り駅は新宿、交通費は全額支給の会社
→40年間で0円

・転職あり:那須塩原在住、会社最寄り駅は東京、新幹線料金コミの定期代を全額負担
→40年間で5751万400円

「転職あり」の人、こんなに交通費かかる時点で、普通なら、また別の会社に転職するんじゃありません? この計算は、まさに計算のための計算、タイトルとの整合性をつけるための「数字いじり」としか思えません。

残念ながらこういった極端な計算が、本書では他の部分でも見受けられます。


もっとも、作り手のほうは、そんなことは百も承知なようで。
すでに書評などでも取り上げていただいているとおり、「1億円」の算出の仕方については、少し極端な例も含めています。しかし、とくに読んでほしいターゲットに届けるには、このくらいのインパクトのあるタイトルが必要だと思いました。
『転職は1億円損をする』の著者に聞く 転職して損をしないか見極める方法
と著者はインタビューに答えています。

この本、早々と2刷が決まったということですし、いまのところ、作り手の思い(と狙い)は、読者に「まあ、これぐらいならアリなんじゃないの」と、受け入れられているのかもしれません。

ただ、個人的には、今回の本はタイトルがあまりに先行しすぎたように思います。

転職と同じで、「長い目で考えると」こういうタイトルづけが、今後の執筆生活において、ボディーブローのように効いてくるかも……


そうそう、忘れるところでしたが、このタイトルで著者がなぜ300万円損をするのか、その種明かしをしておきましょう。


①本書が、この「無理しすぎたタイトル」の影響で、これ以上増刷はしないと仮定すると……

この本の定価740円×印税率10%×総部数(2刷)13500部=総印税999000円

②同じ著者のヒット作『最高学府はバカだらけ』の部数が(現在55000部)、著者の本で最大限期待できる読者数だとすると……

この本の定価740円×印税率10%×期待部数55000部=総印税4070000円

*双方とも、便宜的に税込定価×印税率10%で計算。部数は著者ブログより


というわけで、著者はタイトルのおかげで、「300万円」印税をもらいそこねているかもしれません。

と、誰がどう見ても「数字いじり」の域をでないインチキ計算ですが、知人としては、こういう意地悪な外野の声(って、俺だけど)に負けずに、バンバン売れて、この試算を覆してもらいたいものです。


*当ブログへの献本は、以下のルールに則っていただける限り、歓迎いたします。
当ブログへの「献本ルール」を、ここらでハッキリ決めようと思います。
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by aru-henshusha | 2008-11-04 02:02 | 本・出版