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by aru-henshusha

『読書は1冊のノートにまとめなさい』は、「いい本」だけど、何かが足りない。

c0016141_15563910.jpgこれから紹介する本は、かなり前に担当編集者の方からいただいた。

読書は1冊のノートにまとめなさい

なかなか紹介できなかったのは多忙だったせいもあるけれど、もう一つ理由がある。

正直に言うが、この本をどう評価していいか迷ったからだ。

「同業者」としては、本書は高く評価すべきだろう。


ベストセラー『情報は1冊のノートにまとめなさい』の続編として多大な期待を受けてきたであろうこの本を、著者と編集者の方々はうまくまとめ上げたと思う。

たとえば、本書の構成の核となる 「インストール・フロー」は、その好例だ。

  1 探す(探書リスト作成)
  2 買う(指名買い)
  3 読む(マーキング)
  4 記録する(読書ノート作成)
  5 活用する(検索テキスト作成)

という段階にそって本文が展開し、第1章には、全体の流れのごく簡単なサマリーまでついている。
この通り実践すれば、著者が編み出したノウハウを無事「インストール」できるだろう。

同業者から見て、この本には、お世辞ではなく「いい仕事がされている」。
しかしながら、「一読者」として、僕はこの本には満足していない。



この本のカバーには、「多読・速読より、一冊ずつきちんと頭に落とす読書術」というコピーがある。

この言葉どおり、1冊の本を驚くほど短い時間で読む方法も、大量の本を読んで得た知識をビジネスに生かしてリターンを得ようなんてメッセージも、本書には書かれていない。

この本が扱うのは「まっとうな読書(&情報整理)」のノウハウだ。
しかし、そのまっとうさゆえに、それらのノウハウには新鮮味がほとんど感じられない。


僕らのように編集という職に就いた者で、「一冊ずつきちんと頭に落とす」ことを一度も意識しないで本を読んできた人間が、どれだけいるだろう?

仕事であれプライベートであれ、僕らは本の内容を思う存分享受するために、それぞれの読書術を日々磨いているはずだ(きっと、本書の担当編集者の方も)

だから、この本に書かれている大抵のことは僕は実践(あるいは理解)しているし、一部のノウハウは自分に合わないと思って止め、一部のノウハウはよりよいと思う方法で導入済である。

たとえば、本書で言う「探書ノート」は「はてなブックマークのコレクション機能」を代用している。
「読書ノート」のかわりとして、このブログには、よいと思った本の書評をアップしている。
読んだ本の書誌的な記録は、ブログのライフログに任している。
(よく考えたら、これも「はてブ」で代用できそうだが……)

そういう「読者」としては、この本は「いい本」だけど、何かが足りない。
僕は今さら自分の読書生活を、「1冊のノートにまとめたい」とは思わない。



最初に書いたように、今でも僕は、この本の評価を迷っている。

「他社の商品」として見たとき、この本は素晴らしい一冊である。
けれど、「自分が読む本」としては、この本には、やはり何かが足りない。

いい!と思える本というのは、自分にとってまったく新しいことが書いてある本というより、結局、自分自身の考えを後押ししてくれるもの、というか、薄々知っていたことを証明してくれる本。」と言った方もいるけれど、こと読書関連の本については、僕はそう思わない。

読書は僕にとって、多分死ぬまで欠かせない行為である。
だから、本の少しでも新しい読み方、違った本の楽しみ方を教えてくれるような本に、僕は出合いたい。

*追記:そのような意味で、以前、僕が感銘を受けたのが以下の本だ
→『本の読み方 スロー・リーディングの実践


*当ブログへの献本は、以下のルールに則っていただける限り、歓迎いたします。
当ブログへの「献本ルール」を、ここらでハッキリ決めようと思います。
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by aru-henshusha | 2008-12-25 18:16 | 本・出版