ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

簡単だけど難しい、「編集」の扉を開く合言葉。

c0016141_238463.jpg本当はたまった献本を先に紹介しなければいけないのですが、どうかあと一冊、この本についてだけは書かせてください。

最近読んだ中で、まぎれもなく一番読んでよかった本です。

街場の教育論

「教育」というテーマの本でありながら、仕事にも人生にも効く「学び」を得たように思います。
中でも、これから紹介するのは、僕の生業である「編集」に通じる話です。

(「学び」の基本は)自分が何を知らないのか、何ができないのかを適切に言語化する。その答えを知っていそうな人、その答えにたどりつける道筋を教えてくれそうな人を探り当てる。そして、その人が「答えを教えてもいいような気にさせる」こと。
それだけです。
(中略)
道を進んでいたら、前方に扉があった。そこを通らないと先に進めない。でも、施錠してある。とんとんとノックをしたら、扉の向こうから「合言葉は?」と訊かれた。さて、どうするか。
「学び」とは何かということを学んできた人にとっては、答えは簡単です。
知りません。教えてください」です。扉はそれで開きます。(120ページ)

この「学び」を「編集」に変えても、僕は成立すると思います。

むろん、編集する本のジャンルによっては、これがあてはまらないこともあるでしょう。
しかし、少なくとも僕が普段作っているビジネス書の場合、まさに「知りません。教えてください」という合言葉を著者に投げかけるところから、仕事が始まります。

こういうと、「編集」というのは簡単な仕事のように思われるかもしれません。

たしかに簡単だけど、同時にとても難しい。
それは、引用した言葉の繰り返しになりますが、

①自分が何を知らないのか、何ができないのかを適切に言語化する
②その答えを知っていそうな人、その答えにたどりつける道筋を教えてくれそうな人を探り当てる
③その人が「答えを教えてもいいような気にさせる」


の3つが、口で言うほど簡単ではないからです。

自分が何を知らないのかを知る(企画立案)、答えを知っていそうな人を探り当てる(著者選定)、その人に答えを教えてもらう(執筆交渉)、この中の1つにでも間違いがあれば、それは本来、自分が求めていた本とは違うものになってしまう。

実際には、本を作ってから(あるいは作る過程で)その間違いに気づくことも少なくありません(少なくとも僕は)

簡単だけど難しい。それでも「知りません。教えてください」を繰り返していくのが編集の仕事なんだなぁと、今さらながら気づいた次第です。
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by aru-henshusha | 2009-02-24 23:37 | 本・出版