ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

名刺がなければ、ただの人。(ヒトリゴト。16)

編集者という職業柄、僕はわりと多くの人に、名刺をばらまいている。
初対面の著者に仕事をお願いするさいはもちろん、知人の紹介で人に会うときや、普通の飲み会でも名刺を渡す。

僕の名刺を受け取った人は、「編集者」という肩書きを見て、思い思いのリアクションをする。

自分を売り込む人、編集者という存在に興味を示す人、本や出版関係の話題を振ってくる人。
色々いるが、おおむね好意的な対応だ。

こちらとしても、それをキッカケにネタを探したり、面白い人を紹介してもらったりしている。

でも、それもこれも、みんな「名刺」のおかげである。
(僕はべつに、文藝春秋とか朝日新聞社と書かれた、ブランド名刺の持ち主ではないけれど)

会社が小さかろうが、相手が出版社の人間とわかれば、そういう目で僕を見る。

けれど、ときどき考える。
「編集者」でない「生身の僕」に、どれだけの価値があるのだろうと。

もちろん、そんな仮定に、現実的な意味はない。

一度なってしまった以上、名刺があろうがなかろうが、僕は編集者である。
下手をすれば、会社を辞めても「元編集者」で、その肩書きや経験は消失するわけじゃない。

だけど、そういった「飾り」のない僕は一体どれほどの人間なのか、やはり気になる。
「編集者」として頑張れば頑張るほど、それが不安になる。

これは他の職業でも言えるだろうけど、人間、名刺がなければただの人である。

たとえ、そんなただの人になったときでも、僕は(最低限の)誰かに必要とされる人でありたい。

そのために、自分には何があるのか。何が足りないのか。

そんなことを、秋の夜長にふと考えてみたりする。
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by aru-henshusha | 2005-10-16 01:14 | 不定期なヒトリゴト。