作家の盗作を、編集者は見抜けるのか?
2005年 10月 19日
講談社が少女漫画を回収 「スラムダンク」から盗用(exciteニュース)
この事件について、漫画編集者の綜子さんがこんな記事を書かれています。
漫画に盗用=単行本を絶版、回収(行列のできる橋下弁護士ファン日記)
原稿をいただいて「これ、あの漫画のパクリかも」と思ったことはないし、そういう「確認」をしたこともありません。それは、その作家さんが産みの苦しみを味わうプロセスに、深さや長さの差はもちろんあるけれど、一瞬でも立ち会ったりかかわったりしてるゆえに、できあがった原稿を見たときには、これは作家さんが頑張って作ったものだ、ということにおいて、疑問なんて感じようがないのです。お疲れ様って言っても言い足りないくらい疲れるまで頑張っていただいたわけで。
こうおっしゃる気持ちはよくわかります。
また、そういうふうに感じられる相手だからこそ、こちらは原稿を依頼しているわけですし。
ただ、僕の場合は根っからの「性悪説」(あるいは「性弱説」)信奉者なので、それでも著者を信じきることはありません。
残念ながら、産みの苦しみが大きければ大きいほど、盗作・盗用という「劇薬」に手を出す方がわずかながらいます。
では、編集者が100%盗作を見抜けるかというと、それは正直、難しいと思います。
とくに「文芸(小説)」というジャンルの編集者は、かなり困難なのではないでしょうか。
たとえば、実用書といわれるジャンルでの盗作は、ほとんどが同一テーマの先行書からの盗作でしょう。
ダイエットの本なら、主要なダイエットの本に目を通しておけば、かなりの確率で盗作を防げます。
しかし、これが「ダイエットをしている社長秘書がひょんなことからタイムスリップ、三億円事件の犯人の謎を解き現代に戻った彼女は、勤務先の敵対的買収騒動に巻き込まれるのだった!」なんてストーリーの小説だったら(そんな作品、もちろんないけど)どうなるか?
秘書の仕事についての本、タイムスリップを扱ったSF、三億円事件の解説書、M&Aを扱ったビジネス書、すべてが「ネタ本」になる可能性があります。
もちろん、これは大げさな例ですが、「文芸」というジャンルでは編集者の「守備範囲」が無限に近いくらい広大になる可能性は否めません。
その範囲内の本、すべてに目を通せるかといったら、それは不可能に近いと思われます。
僕はべつに、だから盗作があっても仕方ない、という気はありません。
ただ、現実として、これからもこういう事件は起き続けるでしょう。
それを防ぐために、編集者はできるだけ多くの本に目を通す努力は必要です。
けれど、何より大事なのは、作家のモラル、プライドだと考えます。
まあ、「性悪説」の僕がこんなことを言うのも皮肉ですが……