ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

仕事を愛せば愛すほど、憎しみもまた大きくなる。(ヒトリゴト27)

世の中に、愛する人を憎むほど辛いことはありません。
なぜなら、愛する人を憎みだすと、その憎悪はとどまるところを知らないから。

自分の愛情が、ある日どこかで捻じ曲がって、憎悪の感情として自身の胸につきささる。
愛していれば愛しているほど、その量に比例して、憎しみも大きくなる。

まるで、全力で壁をなぐって、自分の拳を傷つけるかのよう。
こちらの思いが大きいほど、受ける傷も深く、治癒しがたい。

同じようなことが、仕事にも言えると思います。
自分の好きな仕事、愛する仕事を憎まなければならなくなったとき、憎悪の炎はどこまでも燃え、わが身を焦がします。

僕は、「編集」という仕事を愛しています。
年々その思いは強くなり、仕事にかける情熱と時間は増える一方です。

だけど、最近、その「愛情」は「愛憎」に変わっている気がします。
編集という仕事を愛すると同時に、それを憎んでいる僕がいます。

愛する人にも嫌な面があるように、愛する仕事にも嫌なところがたくさんあります。
この世に「完璧」なものはまずないですから、それは受け入れなければならないものなのでしょう。

けれど、近ごろの僕は、編集という仕事の嫌な面を見すぎたのかもしれません。
いや、より正確に言うならば、「編集」という仕事を通して垣間見える、「著者」の醜い一面に耐えられなくなったのかもしれない。

世の中に汚い人、醜い人はたくさんいます。傲慢な人、意地汚い人もくさるほどいる。

かくいう僕だって、清廉潔白とは程遠い人間です。
人にどうこう言えた義理ではないのはわかっています。

しかしながら、著者にだけは、できればきれいでいてほしい。
いや、いくら汚れていようとも、その原稿だけは「光」を放っていてほしい。

先生、僕はあなたが嫌いです。

あなたの、できるだけ手を抜いて銭を稼ごうという考え方が嫌いです。

文章を書くことを「非効率」扱いし、口述筆記しかやらない仕事のやり方が嫌いです。

そのくせ、あいだに入るライターを大事にしないで、下僕のように扱うあなたが嫌いです。

本のテーマについてはろくに語れないのに、印税の話になると滑らかになる、あなたの弁舌が嫌いです。

そして何より、本というもの、出版というものをまったく愛していないあなたが大嫌いです。

編集という仕事を続ける限り、これからもずっと、こういう思いをし続けるんでしょうか。
それを我慢し、許し、いつかは慣れていくのが、愛なんでしょうか。

愛する仕事を憎まなければいけないのは辛いです。
その辛さは日々大きくなって、僕を苛み続けています。
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by aru-henshusha | 2005-12-22 01:12 | 不定期なヒトリゴト。