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ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

作家と編集者は、互いを補完する生き物である。

う~ん、すごい。
僕も、「文藝春秋」の例の記事を読んだけど、こういう考え方には至らなかった。

村上春樹恐怖症(内田樹の研究室)
「眼高手低」という。
創造よりも批評に傾く人は、クリエーターとしてはたいした仕事はできない。
これはほんとうである。
私自身がそうであるからよくわかる。
私もまた腐るほどたくさんの小説を読んできて、「これくらいのものなら、俺にだって書ける」と思ったことが何度もある。
そして、実際には「これくらいのもの」どころか、一頁さえ書き終えることができなかった。
銀色夏生さんは歌謡曲番組をTVで見て、「これくらいのものなら、私にだって書ける」と思って筆を執り、そのまま一気に100篇の歌詞を書いたそうである。
「作家的才能」というのはそういうものである。
努力とか勉強とかでどうこうなるものではない。
人間の種類が違うのである。
作家と編集者の間には上下の格差や階層差があるわけではない。
能力の種類に違いがあるだけである。
同時に、だからこそ作家と編集者という、「2種類の生き物」が必要なのだと僕は思う。

書くこと」と「編むこと」はそれぞれ別の才能を必要とする行為であり、その両方の才能を有する人は、ほとんどいないと言っていい。

逆に、自分が書き、かつ編める人間だと思う人は、ためしに原稿執筆から編集まで一貫してやってみればいいのだ。
そして、一冊の本を一人でつくることの大変さを感じるとともに、その本がどんなに<ちぐはぐ>なものかを思い知ればいい。

「書く」と「編む」の二物を、天から与えられた人は稀有である。

だから、作家がいるし、編集者がいる。

互いに、それを忘れてはいけない。
by aru-henshusha | 2006-03-12 21:35 | 本・出版