ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

「腐る本」をつくるのも、「腐らない本」をつくるのも難しい。(ヒトリゴト39)

腐る本と腐らない本(サンライズ出版の近刊・新刊)
私はずっと前、「食品を扱う業者さんは商品が腐るから大変ね」と言っておりました。
それに引き換え、本は腐らないものだと思っていました。

でも、本も腐るのですね。

会社では賞味期限のある本、ない本としてようやく分別ができるようになりました。
ここでいう「腐る本」とは、流行に乗って短期間で部数がはけるようなタイプの本だろう。
最近で言えば「株」関連の本が、その典型である。

いっぽう、「腐らない本」とは流行に左右されず、何年・何十年にもわたって売れる本だ。
「名著」とか「古典」(文学にかぎらない)といわれてる本がそれにあたる。


「腐る本」には「腐る本」なりの、本づくりの難しさがあると思う。

旬のテーマを見つけ、そのテーマが腐らないうちに一定水準のものを書ける著者にアプローチし、短期で売り切るような販促方法を考える。
当然ながら、営業、広告の力も借りなければ、意図的に仕掛けることはできない。

編集者として、あらゆる方向にむけた「瞬発力」が必要とされる。


もちろん、「腐らない本」をつくるのも大変だ。

長年読み継がれるテーマを掘り当て、時代の変化に耐えうる筆力の著者と、古典足りうる作品を作り上げる。
正直、本をつくる際にそこまで「読み切る」ことができたら、相当の才能だと僕は思う。

そして、それができる人間には、あらゆる意味での「基礎体力」が備わってるはずだ。


編集者として本づくりの現場に携わって、僕は数十冊の本をつくってきた。
その間、どれだけ「腐る本」「腐らない本」をつくってこれただろう。

気がつけば、腐るとか腐らないとか以前に、あるんだか無いんだかわからない本を量産してしまったような気がしてならない。


腐ってもいい。腐らなくてもいい。

僕がつくった本は、どれだけの人に届いただろう。
僕がこれからつくる本は、どれだけの人に届くのだろう。


そんなことを考えながら、迷いながら、僕は本をつくっている。

その迷いが消えることはないと思うけど、迷ったかいがあるような本をつくれればいいと思う。
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by aru-henshusha | 2006-06-06 17:13 | 不定期なヒトリゴト。