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ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

「POP」があるから売れるというより、「書店員」が書いたから売れるんだ。

読売新聞曰く、「編集者もおちおちしてはいられない時代になった」そうだし、
ちょっとまじめに考えてみる。

書店員の手書き「POP」 「帯」上回る!?訴求力(本よみうり堂)

編集者が書く帯より、書店員が書くPOPに訴求力がある(場合がある)のは、
まさしく「書店員」が書いたから、が大きい理由であると思う。

編集者が自分のつくった本を、「面白い」とか「役に立つ」って帯であおるのは当然のこと。

その本が売れることでお給料をもらえるんだから、
(たとえ出来がイマイチの本でも)何とかして「売る言葉」で飾り立てる。

いっぽう、書店員だって本を売らなきゃいけないことに変わりはないけれど、
編集者とはちがって、それはA社の本でもB社の本でもいい。

(特別な事情がないかぎり)自分が売りたいと思う、
本当にいい本・面白い本だけにPOPが立つ。


だから、普通の読者にとって、「編集者」の帯の言葉と、
「書店員」のPOPの言葉はもつ意味が違う。


僕だって、読者の立場で本を買うときは、「書店員」の言葉のほうにより信憑性を感じる。
(ただ、その店員と読書センスが合わなかったら意味ないけど)

僕ら編集者(あるいは営業・販促の人間)がPOPをつくることもあるけれど、
それだって「書店員」の手書きPOPには、まあかなわないだろう。


けれど、だからといって「編集者」のつくる帯やPOPに、意味がないわけではない。

そもそも、書店にある本のなかでPOPをつけられる本なんて少数だし、
書店員が感じる「本の第一印象」は、こちらがつくった帯によるところも少なくないだろう。

POPがなくても売れるような帯の言葉を考えて、また、
書店員自身がPOPを書きたくなるような本に仕上げる。

その意味で、「おちおちしている」編集者なんて、そうそういない。


つくった本が、書店員の熱烈な後押しを受けて加速して売れていくのは、とても嬉しいことである。
その「幸運」に恵まれるためにも、(帯も含めて)僕らは頑張って本をつくっているつもりである。
by aru-henshusha | 2006-06-14 19:56 | 本・出版