ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

君が僕を必要で、僕が君を必要ならば。(ヒトリゴト43)

昔、母親にこんなことを言われたことがある。

「私はあなたなんか生みたくなかったの。
あなたを生んでくれって言ったのはお父さんよ」

母が僕に対して、どういう気持ちでこんな言葉を言ったのかは知らない。
父と母との間で、本当にこういうやり取りがあったのかもわからない。

だけど、僕はこの言葉にひどく傷ついた。

何せ、実の母親から「あなたは必要ない」と言われたのも同然だから。

そして、僕のことを「必要だった」はずの父親は、僕が三歳のときには家を出ていた。
僕は彼には引き取られなかったし、彼は離れた場所で、また新しい家庭を持った。

必要だった」はずの僕は、結果的には、父親にも母親にも「必要とされない」存在だった。


そんな生い立ちだったから、僕はできるだけ「人を必要としない」で生きてきた。

自分のことは、できるだけ自分でした。
人に頼るのが嫌だった。

友達を必要としなかった。
相手は僕を友達と思っていても、僕は心からそうだとは思えなかった。

両親から「必要とされなかった」自分が、誰かを「必要とする」ことが許せなかった。
一時的に力を借りることはあっても、永続的に依存することはできなかった。


そんな僕が変わったのは、間違いなく、君と出会ってからだ。

僕は君のことを、本気で必要だと思った。
一目ぼれだと言えばそれまでだけど、自分の人生にはこの人が必要なんだと、僕は確信した。

二人はやがて付き合った。

二人で誕生日を祝いあって、記念日を数えているうちに、いつの間にか七年が過ぎていた。

喧嘩はいっぱいしたけれど、お互いがお互いを「必要」としている関係だと思っていた。


だから、あの日の君の言葉が、僕にはまるで死刑宣告のように聞こえた。

私にあなたが必要なのか、もうわからなくなった

僕は、瞬間的に、あの日の母の言葉を思い出していた。

ああ、僕は、君からも必要とされない人間なんだなぁって。
ただ、僕が君を必要としてただけなのかもなぁって。

君はその言葉とともに、しばらく距離をおきたいといって、僕のもとから去った。


あの日から僕は、その言葉がずうっと頭から離れなかったよ。

仕事の合間にふと手を休めたとき、休日に一人で飯を食ってるとき、夜が更けてようやくベッドにもぐりこんだとき。

自分は君にとって、必要なのか、必要じゃないのか。
考えても、考えても、わからなくて。

それで、けっきょく、君の答えを待つことにした。


待っている間、「私には、あなたは必要ない」と言われることが本当に怖かった。
自分がここまで必要としている人に、必要でないと言われるのが辛かった。

そんなことは、いくらでも起き得ることだと頭ではわかっている。
でも、この七年間、君のことをを愚直に必要としてきた僕には、その傷はすぐには癒えないだろうと思うと憂鬱だった。

そんな恐怖におびえている間に一か月が過ぎ、昨日、君から、電話をもらった。


久しぶりに声を聞いて、気づけば三時間も話していた。

僕が君に何を言い、君が僕に何を言ったのかは、ここには書かない。

だけど、一つだけ書いておきたいのは、君にとって、僕がまだ必要らしいとわかったこと。


君が僕を必要で、僕が君を必要ならば。
それ以上、僕が言うことはない。

君に必要とされる喜びは、、どんな言葉でも表しきれるものじゃないから。
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by aru-henshusha | 2006-07-18 00:20 | 不定期なヒトリゴト。