世の中には、「初版」の次が「第6刷」になる出版社がある。
2006年 12月 12日
少なくとも、編集者になる前は、こういう版元があるって知らなかったなぁ。
第084号 『企画書リアルサンプル版付:奥付の見かた、あれこれ』
(経営コンサルタント探しの「経営堂」)
多くの出版社では、初版何千部かを刷って書店での様子を見て重版(2刷目)をかけるわけですが、出版社の中には初刷のあとに2刷目がないところがあるのです。こういう社内ルールがある(と噂されている)出版社を僕は数社知っている。
初版売り切りで重版をかけない、というのではありません。
以下のような表記ルールになっているからです。
例えば、初刷り5,000部を市場に撒いて、売行き好調と見た上で増し刷りを1,000部かけるとします。この1,000部を重版したとき、普通は2刷ですが奥付に突然刷り数6刷と表記する版元があります。
つまり1刷の単位が1,000部であって、刷の数イコール部数という表記を社内ルールにしているのですね。
といって新刊なのに初版がなくて、いきなり5刷から始まるのはいかにも異様なので、初刷は初刷として表記しています。
もちろん、あくまで「社内ルール」なので、他社の人間には本当のところはわからない。
が、書店の実売データと比較して、「ここは、1刷=1000部という計算なのだな」と、なんとなくアタリはつけている。
普通の読者は、(かつての自分がそうだったように)こういう事実は知らないから、奥付に「第10刷」とあると、けっこうベストセラーだと思ってもおかしくない。
しかし、実際は「1000部×10刷=10000部」だったりするわけだ。
ちょっとサギっぽい気もするのだけど、とくに法に触れているわけではなさそうだし、ここらへんは各社の「良心」の問題なのだろう。
ちなみに、出版社の中には、著者に黙って重版をかけてしまう(=その分の印税は払わない)、ひどいところがあるという噂も聞いた(これは正直、デマであってほしいのだが)。
好きなことを仕事にしていると、ときおり何ともやるせない気持ちになることがある。