ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

当たり前だけど、「定価でも買いたくなる本」を作るということが、結局は大事なのだ。

「お金を出して本を読む人たち」を笑うな!(活字中毒R。)
『たぶん最後の御挨拶』(東野圭吾著・文藝春秋)より。

(2002年の「年譜」の一部です)

わからないといえば出版界の先行きだ。本当にもう本の売れない時代になった。不況の影響はもちろんあるだろう。書籍代というのは、真っ先に倹約するのが可能なものだからだ。図書館に行けば、ベストセラーだって無料で貸してくれる。レンタル業なんかも登場しつつある。どういう形にせよ、読書という文化が続いてくれればいいとは思う。しかし問題なのは、本を作り続けられるかどうか、ということだ。本を作るには費用がかかる。その費用を負担しているのは誰か。国は一銭も出してくれない。ではその金はどこから生み出されるか。じつはその費用を出しているのは、読者にほかならない。本を買うために読者が金を払う。その金を元に、出版社は新たな本を作るのだ。「読書のためにお金を出して本を買う」人がいなくなれば、新たな本はもう作られない。作家だって生活してはいけない。図書館利用者が何万人増えようが、レンタルで何千冊借りられようが、出版社にも作家にも全く利益はないのだ。
こんな文章のあとに何ですが、僕はブックオフで本を買うことがよくあります。

そこに、月々の図書購入代を少しでもおさえたい、という気持ちがまったく働いてないとは言いません(薄給なのでね)。
けれど、それ以前に、「定価では買いたくない本」を適正(だと思われる)価格で買いたいから、という理由もあります。


たとえば、208ページの46判のビジネス書に1400円(税抜)の定価がつけられているとします。
1冊の本の原価やこの本の売上から得られるだろう出版社の利益だけを考えれば、この定価は「適正」の範囲です。

でも、その内容によっては、この値段が「高い」と思えるときもあります。
下手をしたら、半分の700円前後の新書並みの値段でも高い場合もある。


そんなに価値のない本なら買わなければいいと思うかもしれませんが、仕事柄、(たとえば、この本は売れているから)いちおう目を通しておこうという場合もあります。

そんなとき、僕は定価で買うのが癪なので、わざわざブックオフで安く入手したりします。

むろん、ふつうの書店で会社の経費で買うぶんには自分の懐は痛みませんが、こんな本を定価で買って他版元にお金を落としてやること自体が許せないのです。
(ちょっと、性格が悪いかもしれませんが……)


話がすこしそれ気味なので、軌道修正しましょう。


出版業界の今後にとって、「本を定価で買い、著者や出版社にお金が回るようにする」ことは、たしかに大切なことだと思います。

けれど、すべての本が、それに値するわけではないでしょう。
(もちろん、Aさんにとって価値がない本が、Bさんには価値があることも十分ありますが)


僕は、編集者である前に一読者として、「その本にそれだけのお金を払う価値があるかどうか」を常に考えながら、本を買いたいと思っています。

同時に、読者のそういった選別に、たえられるような本を作りたいのです。

きわめて当たり前のことだと思いますが、その当たり前から出発して本を作ることが、「お金を出して本を買う人」を増やす第一歩ではないかと考えます。
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by aru-henshusha | 2007-02-18 01:41 | 本・出版