本を「作りたがる」編集者、本を「売りたがる」編集者。
2007年 03月 08日
「売れる企画かどうか?」を考える編集会議では、上の記事にからめて、日頃思ってることをちょっとだけ(もしかしたら、前にも書いたかもしれないけど)。
ある企画が売れるか売れないかを分析するのが
メインテーマになっているのではないでしょうか。
実際、私が過去在籍した会社では、そうなっていました。
たいていの場合は、「類書がない」か「類書が売れていない」
という理由で、ほとんどの企画は却下になるわけですが。
逆に、編集者が「売りたい企画」である場合は、
「こういう理由でこの企画を提出した、売るにはどうすれば良いか?」
という、きわめて明確な「提議」がなされるので、
出席者はその企画が売れるかどうかではなく、
具体的に売るためのプランなりアイデアなりを言わなくてはならない。
編集者には本を「作りたがる」編集者と、本を「売りたがる」編集者がいる。
(もちろん、その両方を兼ね備えている人もいるけど、どちらかに偏っている人もいる)
本を「作りたがる」編集者は、本を「売る」ことに、さほど興味がない。
本を作るのは俺の仕事、売るのは営業の仕事。
そう思っているから、「売るためのプラン・アイデア」を考えるのは、好きでも得意でもない。
正直、僕も昔はこのタイプだったと思う。
本が好きで、本を作りたいと思って編集者になった。
だから「売る」ことにそれほど興味がもてず、出したら出しっぱなしで、運がいいときだけ、本が売れた。
けれど、今の会社に移ってから、僕はもう少し「売りたがる」ようになった。
その変化の理由はいろいろだけど、一つには著者の影響がある。
僕がいま担当する著者(多くは執筆以外の本業がある)の多くは、自分の本を売ることに積極的だ。
彼らは、本を一冊でも売ることで自分の本業につなげたいという気もあるのだろうし、やるからには売りたいという根っからの「商人根性」もあるのかもしれない。
著者によっては、いっしょに仕事をするあなたのために、一冊でも多く売りたいとさえ言ってくれる人もいた。
こういう著者と仕事をしていると、僕も、「とにかく、売らなきゃ」と思うようになってきた。
会社のため・自分のためという以前に、がんばって原稿を書いて、さらに売ることにも協力を惜しまない著者たちのために、僕が「売る」気持ちをもたなくてどうする、と思うようになった。
とはいえ、本を「売る」ということは、そう簡単ではない。
いくら、「売るためのプラン・アイデア」を練っても、100%それがハマるわけではない。
(むろん、それ以前に本のクオリティの問題もある)
「売ろう」として、「売れなかった」本もあった。
あのときは、著者にも、会社にも申し訳なかった。
「作る」だけで満足せず、「売る」ことにこだわりだすと、プレッシャーも、疲労も増える。
それでも、僕はこれからも、「売る」ことを考えていくだろう。
べつに、売れる本がいい本だとか言う気はなくて。
著者の頑張りに応えるためにも、一冊でも多く「売れる」本にしたいだけ。
僕は、どんな著者からも、「売(れ)る」価値がある原稿をもらってると思うから。