山田真哉の新作タイトルを、「プロ」として分析してみる。
2007年 03月 11日
ひそかに推移を見守っていた、山田真哉氏の光文社新書のタイトル(上巻のみ)が、ほぼ決定したとか。
今度こそタイトル決定?(『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記)
『禁じられた数字』の新タイトルですが、上巻は僕は正直、このタイトルよりも、もうひとつのタイトル候補としてあげられていた、『禁じられた数字』のほうが好みです。
『食い逃げされてもバイトは雇うな』
にします。
まだ出版社との最終決定はしていないのですが、たぶんこれで行くでしょう。
『バイトより食い逃げ』とは、そもそも『食い逃げされてもバイトは雇うな』という経営者への提言だったのです。
“会計的思考”の真髄を、この一言に集約させています。
ただ、ヨソサマの版元から出る本ですし、外野の人間が出版前から「こっちのほうがいいんじゃないの」的横槍を入れるのもアレでしょう。
今回は、(いちおう)「プロ」として、決定したタイトルのほうだけ、サクッと分析しようと思います。
ところで、以前、僕はこんな記事を書いたことがあります。
「このブログがすごい!2007」13位をゲットした、ある編集者の<見出し力>の秘密。
このなかで、僕は見出しをつけるときに気にする要素として、以下の2つをあげました。
・「言い切り」と「問いかけ」
・「ヌガシ」と「カクシ」
*詳しくは過去記事をご覧ください
これは、本のタイトルでも共通する要素であり、今回の、
『食い逃げされてもバイトは雇うな』
は「カクシ」+「言い切り」というパターンです。
(一部の勘のいい人は別として)このタイトルだけ見ても、山田氏が本で伝えようとしているメッセージは見当もつきません。
だからこそ、その答が知りたくて読者はこの本を手に取るはずだ、という狙い・願いがこのタイトルにはこめられてるのだと思います。
そもそも、(光文社新書の)前作、
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 』
も「カクシ」+「問いかけ」というパターン。
言い切り、問いかけの差はあれど、読者の好奇心を引っ張り出すという点では、両者とも同じようなタイトルのつけ方がなされているといってもよいでしょう。
しかしながら、『食い逃げ』と『さおだけ屋』にはひとつ、大きな差があると僕は見ます。
それは、(ベタな言い方をすれば)「あるある感」です。
『さおだけ屋』のタイトルをはじめて知ったとき、僕は問答無用で「うまい」と思いました。
なぜなら、僕自身、「休日に近所を通るさおだけ屋は、いったいどうやって儲けているのか」という疑問を何度も感じてきたからです。
ところが、『食い逃げ』のタイトルは、少なくとも僕には刺さりません。
僕がもし飲食店経営者なら、このタイトルを見て、何か感じた可能性は大いにあるでしょう。
(付け加えるなら、タイトルを見るだけで、著者の言わんとすることが、何となくわかったかもしれません)
けれど、僕は<食い逃げ>にも、<バイトを雇うこと>にも縁がありません。
だから、このタイトルを見ても、遠い世界の話に感じます。
そして、そういう読者は僕だけではないとも思います。
僕は、『さおだけ屋』の大ヒットの要因のひとつとして、タイトルの「あるある感」があった、とつねづね思ってきました。
その意味で、必ずしも多くの人に「あるある感」を感じさせられない今回のタイトルが、読者にどこまで刺さるのか、たいへん興味があります。
現時点では、それ以上のことは言いません。
いずれにせよ、ここまで(まるでストーカーのように)出版過程を見守ってきた他社本は、僕にとって初めてです。
領収書なんて切らずに自腹で買うんで、発売日を楽しみにしています。