ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

文章は書いた瞬間から、すでに書き直されている。

ずっと読もうと思っていた新書からの引用。

小説の読み書き
文章を書くとは書き直すことだ。たった一つの言葉を書くときにも、たとえば「僕」と書くときにも、僕は、まず頭の中で「私」にしようか「ぼく」にしようか「わたし」にしようか「自分」にしようかとためらう。で、ためらいを振り切って最終的に「僕」を選択する。「僕」を選択するということは、それといちいち比較検討した他のぜんぶを捨てるということで、その手続きは要するに(実際に原稿用紙に書いたり消したりの跡が残らなくても)書き直しである。(14ページ)
こういう言葉にふれると、他人の文章に手を入れるということ(すなわち編集者の仕事の一部)が、とても怖いものだと再認識させられる。

僕らは時に、書き手が捨てた選択肢を復活させ、あるいは最初から候補にも入れなかった言葉をはめこむこともある。

もちろん、それはこの記事でも書いたように、「よりよくすること」が前提だ。

けれど、当の書き手が「書き直している」文章をさらに書き直すのだから、僕らはとても大きな責任を追わねばならないと思う。

大げさかもしれないが、人の文章に手を入れるということは、その人間が苦難の末に選び取った答を、完全に否定するということなのだから。
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by aru-henshusha | 2007-03-16 01:46 | 本・出版