ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

どんな著者にも似合うタイトル、その著者にしか似合わないタイトル。

最近、この手のネタが続きますが……(まあ、僕自身、悩んでたりするわけです)

2007-03-23-FRI(ほぼ日刊イトイ新聞 -担当編集者は知っている。)
出版社によって、タイトル決定までの過程はさまざまですが、当社の場合、担当者が案を出し、それを社長のAさんと著者に諮(はか)るという、いたってシンプルな流れになっています。
『クレーターと巨乳』の場合、本の全体像が見えはじめ、「そろそろタイトルを決めなければ」という段階になったとき、私には3つほど候補がありました。
この小説集には11の短編が収録されているのですが、そのうち、私から見て特に印象深く思われたタイトルが3本ありました。
「クレーターと巨乳」「馬を追う」「清潔な砂漠」の3本です。
(中略)
実は私自身は、最初、「清潔な砂漠」がイチオシでした。
「『クレーターと巨乳』は、イロモノっぽく思われて、女性に支持されないかも」
「『馬を追う』はちょっとマイナーすぎる印象かなあ」
などと考えたためです。
その点、「清潔な砂漠」は、タイトルからかっちりとしたイメージが拡がり、小説の題名としては、申し分ないように思われました。
ところが、タイトルを検討する打ち合わせの場で、社長のAさんからこんな意見がでました。
『清潔な砂漠』は、ほかの作家でもありそうなんじゃないの?
そう言われれば、たしかにそんな気もします。
女性作家の小説にありそうな、ちょっと既視感のあるタイトル‥‥。
その後、「じゃあ藤代冥砂らしい、オリジナリティがあるタイトルは」という話になりまして、数度の打ち合わせのあと、結果的に「クレーターと巨乳」が浮上したのです。
(中略)
著者の藤代さんにこのことを報告すると、最初、ちょっととまどったようでした。
「女性読者の場合、このタイトルだと敬遠されてしまうのでは?」
という感想をお持ちになったのです。
藤代さんの懸念はもっともです。
私自身、最初はそう思ったのですから。
しかし、「抵抗感はないけれど、既視感があるタイトル」と、「敬遠されるかもしれないけれど、藤代さん的な、ユニークなタイトル」を天秤にかけて、最終的に藤代さんに納得していただきました。
*読みやすさを考え、引用文の改行、だいぶいじってます(それでもかなり長文ですが)
『クレーターと巨乳』というタイトルと、『清潔な砂漠』というタイトルのどちらがいいか、正直、僕にはわかりません。

オリジナリティという意味では、たしかに『クレーターと巨乳』のほうが優れているでしょう。
いっぽうで、このインパクトが、一部の読者の作品との出会いをかえって阻害しているとしたら、それはあまりよくないことだとも思います。
(それ以前に、「売れるタイトル」が文芸の世界で歓迎されるのか、という問題はありますが)


ちなみに、僕がいるビジネス書の世界では、「どんな著者にも似合うタイトル」が少なくないように感じます。
このタイトル、この内容だったら、他の著者でも書けるだろうなぁ、なんてケースも実際あります。

むろん、そのことがその本の価値をおとしめるわけではなく、同じようなテーマを切り口を変えつつ進化していくのがビジネス書というものなのだろう、と思うのですが。
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by aru-henshusha | 2007-03-28 01:41 | 本・出版