ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

表現すればするほど、人が「不満」を覚えるわけ。

発信による成長(MORI LOG ACADEMY)
講演は不得意ではない。もう20年以上、大勢の前で話をすることが仕事だったからだ。しかし、けっして気持ちの良いものではない。肉体的には疲れないものの、話をしたあと必ず気分が落ち込む。もっと伝えられたはずだ、もっと説明できたはずだ、もっと知ってもらいたかったことがある、という後悔ばかりが頭に浮かんでしまう。そういう幻滅にも慣れたけれど、でもやはり面白くはない。同様の不満は、ものを書いたあとにもある。
つまり、「発信」という行為は、どうしたって結局は欲求不満が大きくなるだけなのだ。「受信」は少なくとも「満たされる」行為だが、「発信」はその逆である。出したから不満になるのではない。出すことによって、さらなる未知を知ってしまい、容量が増すために、相対的に不満になる。
だから、ものを表現し伝えることで、満足を得られると考えている人は、たぶん長続きしない。クリエータを目指す人は、古い表現だが、そのことを肝に銘じておくと、仕事として持続できるだろう。満足を求めてはいけない、ということ。不満が大きくなることが正常なのだ。それが、発信することによって得られる「成長」だ、と僕は最近気づいた。
僕が担当している著者も、先日、似たようなことをおっしゃっていました。

「一冊本を書いた後は(自分のノウハウを)すべて出しつくした気になるけど、それによって空っぽになった自分に、新たな情報・経験が入ることで、また次の本が書けるようになる」

ただし、こうやって成長できるのも、表現者としての才能(もちろん努力も)なのかもしれません。
同じようなものを表現、発信し続け、どんどん「退化」していく人も、この業界にはよくいるので。
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by aru-henshusha | 2007-04-02 00:37 | 本・出版