「体重のせた仕事」じゃないのなら、そんな本は出さなきゃいい。
2007年 06月 25日
「よく“仕事だから割り切ってやれ”って言うけど、雑誌の仕事はそれじゃダメ。割り切ってやってると、それなりのページしか作れない。紹介する側が本当にいいと思って、体重のせてやんないと、読者を説得できない。亡くなった淀川長治さんが『日曜洋画劇場』で解説してたのは、好きな作品ばかりじゃなかったはず。なのに、ものすごく嬉しそうに解説してたでしょ。あの人は、どんな作品でも、これはと思えるところが見つかるまで観たらしいんだ。“バスがすごい勢いで走ってましたね~”とか“あの女の子の可愛いことぉ”とか(笑)。作品の本質とは関係なくても、ホントに思ったことだけを言ってるんだよ。だから俺もファッション記事で、こりゃダメだみたいなブランドを扱うときでも、めっちゃカッコいいと思い込むところから入ろうと。そうやって興味を持って掘り下げていくと、どんなものでもそれなりに面白くなってくる。30歳を過ぎたあたりかな、もう大丈夫だ、俺はなんでも興味が持てるって思えたのは」これは雑誌に限らず、書籍でも同じなんじゃないかなぁ。
*引用は2より
自分が、その著者なりテーマなりを面白いと思えないで作ってる本は、やっぱり読者には見抜かれるし、買ってもらえないと思う。
いや、そもそも「著者なりテーマなりを面白いと思えない」本を出すなよ、っていう話ではあるのだけど。
でも、たいていの出版社は、自分が興味を持って出した<自前の企画>以外の本も(制作ノルマやらその他諸事情により)作らなきゃいけないので、そういう本が出てしまうことは少なくない。
僕自身、基本的には自前の企画で、自分の作りたい本を作っているのだけど、ときおり思わぬところからワケのわからない企画が降ってきて、急遽その本の担当になることもある。
そういう場合、(山田氏の言ってることとカブるけど)極力その本の「いいところ」を探して、そこをクローズアップして、本を作るようにしている。
*もっとも、どんなに目を皿のようにして探しても、ほとんど「いいところ」がないっていう企画もあるのだけど。そのときは企画者を恨むしかない
ともかく、自分が全くいいと思えないものを読者の前に出すのは、「失礼」だと思うのだ。
だって、街の定食屋で頼んだ料理がすごいまずかったとき、「いやぁ、じつは俺もまずそうだなぁと思って作ってたんだよ」って定食屋の親父に言われたら、腹立つじゃない。それと同じで。
だから、自分がいいと思えない企画ならできるだけ影響が出ない段階で「中絶」したほうがいいし、それができないなら、とにかく「いいところ」を見つけて、愛情のある本作りをするべきだ。
それが、出版社、あるいは編集者の良心だと僕は思う。