日本の「食」は安すぎる、日本の「本」も安すぎる?
2008年 04月 22日
主婦の方はもちろん、一人暮らしの独身男性が見ても、これらの価格は高いと思うかもしれない。
かくいう僕自身も、きっとそう思ったことだろう。そう、この本を読むまでは。
『日本の「食」は安すぎる』
本書は、このブログがすごい!BLOGなどでおなじみの編集者・岡部敬史さんから送っていただいた。
*本書の関連エントリー
多分、送っていただかなかったらスルーしてしまったジャンルの本なので、感謝している。
本書には、冒頭で取り上げた食品の「高いワケ」が余すところなく書かれている。
同時に、われわれが安い(あるいは適正だ)と思っている食品の「安いカラクリ」も書かれている。
個々の例については、ぜひ本にあたって読んでほしいが、思い切り大雑把に言ってしまうと、安い食品はそのぶん、「味」や「鮮度」や「安全」を犠牲にしている。
また極端な例だが、安さの演出のために「偽装」がなされることもある。
生産者(または関連業者)の努力で価格を下げるにも限度があって、それ以下の安さを実現するためには、どこかにしわ寄せが行くのである。
それを承知で安さを求めるのは消費者の自由かもしれないが、どれだけの人がそのことを自覚しているのだろうか?
これは、「食」の価格に対して、あまりにも考えてこなかった僕自身にも言える。
ここで、話はちょっと飛ぶ。
僕はこの本を読んでいる最中、ずっと「本の値段」について考えていた。
本の値段に関しては、以前こんな記事を書いたことがある。
本の値段は、素人が思っているほど高くはない。
この件に関する認識は、いまでもそう変わらない。
しかし、本書を読んで思ったのは、これはあくまで「生産者」の意見だったなぁということ。
矛盾するようだが、本の「消費者」としての僕は、この本高いなぁと思うことがたまにある。
たとえば、1200円程度のビジネス書を読んで、「この本、何なの? 何も新しいこと書いてないじゃん」と、さも高い買い物をしたように感じるのだ。
(たとえ、それが原価的に見合った値づけであったとしても)
消費者としての僕は、もっぱら、「その本が僕にとって与えてくれるものの価値」と「その本の価格」を比べて、本を読んでいる。
だから、自分にとって価値がないと思った本は、造本的にどんなに適正な価格であっても、やっぱり「高い」のだ。
そう考えると、物の安い・高いは立場によって変わるし、だからこそ、色々なものさしにふれてみるべきではないかと、僕は思う。
う~ん、何だかまとまりのない話になったが、強引にまとめてしまおう。
最後に、この本の価格についてふれる。
本書の価格は、税込840円である。
(献本された僕が言うのも何だが)この値段は、僕とっては相当安い。
普段口にする食べ物を「安すぎる」と思ったことのない僕の価値観を、本書はグラグラと揺さぶってくれた。
僕にとって、その経験は、この価格の倍の値段を出してでも手に入れるべきものだった、と今ならいえる。
もちろん、これはあくまで、僕にとっての「安さ」である。
食に対する問題意識がもとより高い人にとっては、本書の内容はもしかしたら「高い」と感じるものなのかもしれない。
いずれにせよ、「高い」か「安い」か、書店で手にとって確かめる価値はある本だと僕は思う。
その価値を感じさせない「高い」本を、僕はここまで薦めたりはしない。