ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

「ずっと一緒にいようね」と、簡単に言える男を信じるな。

c0016141_2371578.jpg献本ものが続きます(本書も担当編集の方からいただきました)。

バイバイ

HYというバンドのボーカルの方が出された詩集です(第一弾の『あなたへ』もメチャメチャ売れてます)。

詩集はあまり読まないし、私生活でも「バイバイ」されっぱなし(?)の僕としては、読むのがつらいかもなぁとも思ったのですが、これがとてもいい本で。


最初は気に入った詩(or詞)を紹介しようと考えていたのですが、次のエピソードを読んで気が変わりました。
僕が紹介するとしたら、やはり、これしかないだろう、と。

(「永遠に」とか「ずっと一緒にいようね」という言葉を使いがちだった著者に、そういう言葉を言ってあげたいけれど、嘘はつきたくないと、彼氏が言ったときの話)

 初めて言われた時、私は彼の言った言葉の意味が一瞬わからなくて泣いてしまいました。でも、彼はすぐにこう続けて言いました。
「今は二人共愛し合っているけれど、この先何があるか、誰にもわからない。もしかしたら、いずに好きな人ができるかもしれないし、オレに好きな人ができるかもしれない。今は好き合っているから、今の気持ちだけで『ずっと一緒にいようね』って言うことはできるけど、本当にそれでいいのかな?『ずっと一緒』ってそんなに簡単に口にしていい言葉だとは思わない。だから、今は言いたくない。本当にお互いに理解し合えて、尊重して、生涯共に添いとげられる相手として、心から愛してると言えるようになってから言いたいんだ
 彼に言われてから私は思いました。この人は、ちゃんと言葉の持つ力を知ってる人なのかもしれない。彼にならついて行きたいなと。
この彼の言葉を「理屈っぽい」と思った女性(男性)もいるかもしれません。
けれど、こういう理屈、僕は好きなんですよね。

著者は、彼のことを「言葉の持つ力を知ってる人」と書いていますが、僕の言葉でいえば、彼は言葉に対しても、その言葉を投げかける相手に対しても誠実なんだと思います。

じつは、それは僕がひそかに目指していることでもあったりして。


僕は「編集者」という、言葉を扱う職業についたときから、できるだけ言葉に対して誠実でありたいと思っています。
むろん、本のコピーなどであおったりするときはあるのですが、それもいちおう分をわきまえて。

たとえば、著者と話すとき、僕は件の彼氏のように、「簡単に言ってはいけない言葉を、簡単に言わない」ように気をつけています。

たとえ、それが一時、著者を喜ばすとしても、あとから一瞬で「キャンセル」しうる喜ばせ方を、僕はしません。


同業者の中には、僕と正反対な言葉の使い方をする人もいます。
その場のノリで、著者を持ち上げるだけ持ち上げて、何の根拠もない約束をして、風向きが変わったらもう目もくれない。

それでも、そのときが楽しかったのなら、いいじゃないか。

なるほど、そういう言い方・生き方もあるとは思います。
でも、僕はそういうふうには言えないし、生きたくもない。


恋愛の話に戻しましょう。

「ずっと一緒にいようね」と簡単に言える男(女)を、僕は信用しません。
その言葉には、使いどきがあると思うし、やはり、一生に何回も言える言葉ではないと思うから。

どれだけの人に共感してもらえるかはわかりませんが、僕にとっては言葉を大事にできる人こそが、人を大事にできる人なのです。


『バイバイ』には、言葉を大事できる人だけが、人を大事にできる人だけが、書ける言葉が詰まっています。



*当ブログへの献本は、以下のルールに則っていただける限り、歓迎いたします。
当ブログへの「献本ルール」を、ここらでハッキリ決めようと思います。
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by aru-henshusha | 2008-09-16 00:13 | 本・出版