ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

カテゴリ:本・出版( 756 )

砂上のファンファーレ

早見 和真 / 幻冬舎


家族とは、そこにあるだけでは、家族として「機能する」とは限らない。
そのことに気づかされたのは、数年前、母が倒れたときだった。


その日、僕が勤めていた小さな編プロに、勤務先で母が倒れたという連絡があった。

母が入院した病院を訪ねると、脳梗塞だと伝えられた。
最悪、マヒや言語に障害が残ると言われ、母一人、子一人で育った僕は、途方に暮れた。

しかし、正確に言うと、母にとって「家族」は僕だけではなかった。
母の弟、僕にとっての叔父も、病院に駆けつけていた。


叔父に会うのは、久しぶりだった。

幼いころ、僕は、母が働いている関係で、
叔父と祖母が住む家に預けられ、一日の大半を過ごしていた。

祖母は僕をかわいがってくれたが、叔父はそうではなかった。
今で言うと、ニートのような暮らしをしていた叔父は、
虫の居所が悪いと、僕をすぐ怒った。手が出たこともある。

叔父にとって、僕は虫が好かない存在だったように、僕にとって、叔父は憎悪の対象だった。
怒鳴られるたび、暴力をふるわれるたび、いつかこいつを殴り返してやろうと思った。

でも、病院で再会したとき、今がそのときではないことは、すぐわかった。


叔父と僕は、それから、交代で母を見舞い、
手分けして、転院や退院、リハビリの手続きをし、母の容体を見守った。

その後、母は驚異的な回復を見せ、
いまでは(以前とまったく同じとは言わないが)、歩くことも、しゃべれることもできる。

当時(も今もだけど)、別々のところで暮らしていた、
僕と、母と、叔父は、あの日を境に「機能」し始めた。

ただただ母が元気になることだけを願って、
僕と叔父は、そして母自身が自分のできることをやり、支えあった。

彼女が倒れるまで、そんなふうに、
お互いやさしくできる日がくるとは思わなかった。


前置きがずいぶん長くなったようだ。

注目の若手作家、早見和真の最新作、『砂上のファンファーレ』は、
ひと言でいえば「家族が機能する」までを追った物語だ。

本書に出てくる家族は、最初はまったく機能していない。
すでに壊れかけていると言ってもいい。

原因不明の物忘れに悩む母、
事業がうまくいかず借金を重ねる父、
真面目だが家族とは一定の距離をとる長男、
家族になじめず浮いている次男…

彼らは、たしかに家族だけど、お互いがバラバラの方向を向き、
知らんぷりをして、ただそこにいるだけだ。

そんな家族が、あることをきっかけに「機能」しだす。
しかも、驚異的なスピードで。


一つのきっかけから急速に家族が「動きだす」この物語は、
読む人によっては荒唐無稽という印象を受けるかもしれない。

しかし、母の病によって「機能」した家族を持つ僕としては、
家族には、もともとそういう力があるのだと言いたい。

くしくも今回の震災によって、自分たちの家族の「機能」を、再認識した人もいると思う。
家族が痛みを生み出すこともあれば、家族が痛みから守り、癒すこともあるのだ。


家族を、家族の「機能」を信じられない人は、ぜひこの物語に触れてほしい。
自分の家族のことを思い浮かべながら、一気に読めるはずだ。

そして、その日からきっと、あなたの家族も動きだす。

多忙のため、引きつづきコメント欄等、
スルー&お眼汚し状態になることをお許しください

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by aru-henshusha | 2011-04-10 22:40 | 本・出版
昔は結構なテレビっ子だったのですが、最近めっきりテレビを見なくなってしまいました。
しかし、そんな僕でも、この本はオモロ懐かしく読める気がします。c0016141_171262.jpgc0016141_181524.jpg
ザ・テレビ欄 1975~1990』/『ザ・テレビ欄 2 1991~2005

出版社のページで、内容の一部が立ち読みできるのですが、

ザ・テレビ欄 1975~1990ザ・テレビ欄 II 1991〜2005(ともにTOブックス)

92年のテレビ欄に、はなきんデータランドの文字を見つけ、懐かしさを覚えました。

新入社員と昔見てたテレビの話で盛り上がれない人(って、俺か)にオススメです。

そもそも、テレビ欄だけを使って本を作るという発想が「やられた」って感じですよね。
(ちなみに使用しているテレビ欄は報知と、スポニチのものだとか。あと改編期のもののみ掲載の模様)
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by aru-henshusha | 2009-06-24 01:19 | 本・出版
c0016141_238463.jpg本当はたまった献本を先に紹介しなければいけないのですが、どうかあと一冊、この本についてだけは書かせてください。

最近読んだ中で、まぎれもなく一番読んでよかった本です。

街場の教育論

「教育」というテーマの本でありながら、仕事にも人生にも効く「学び」を得たように思います。
中でも、これから紹介するのは、僕の生業である「編集」に通じる話です。

(「学び」の基本は)自分が何を知らないのか、何ができないのかを適切に言語化する。その答えを知っていそうな人、その答えにたどりつける道筋を教えてくれそうな人を探り当てる。そして、その人が「答えを教えてもいいような気にさせる」こと。
それだけです。
(中略)
道を進んでいたら、前方に扉があった。そこを通らないと先に進めない。でも、施錠してある。とんとんとノックをしたら、扉の向こうから「合言葉は?」と訊かれた。さて、どうするか。
「学び」とは何かということを学んできた人にとっては、答えは簡単です。
知りません。教えてください」です。扉はそれで開きます。(120ページ)

この「学び」を「編集」に変えても、僕は成立すると思います。

むろん、編集する本のジャンルによっては、これがあてはまらないこともあるでしょう。
しかし、少なくとも僕が普段作っているビジネス書の場合、まさに「知りません。教えてください」という合言葉を著者に投げかけるところから、仕事が始まります。

こういうと、「編集」というのは簡単な仕事のように思われるかもしれません。

たしかに簡単だけど、同時にとても難しい。
それは、引用した言葉の繰り返しになりますが、

①自分が何を知らないのか、何ができないのかを適切に言語化する
②その答えを知っていそうな人、その答えにたどりつける道筋を教えてくれそうな人を探り当てる
③その人が「答えを教えてもいいような気にさせる」


の3つが、口で言うほど簡単ではないからです。

自分が何を知らないのかを知る(企画立案)、答えを知っていそうな人を探り当てる(著者選定)、その人に答えを教えてもらう(執筆交渉)、この中の1つにでも間違いがあれば、それは本来、自分が求めていた本とは違うものになってしまう。

実際には、本を作ってから(あるいは作る過程で)その間違いに気づくことも少なくありません(少なくとも僕は)

簡単だけど難しい。それでも「知りません。教えてください」を繰り返していくのが編集の仕事なんだなぁと、今さらながら気づいた次第です。
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by aru-henshusha | 2009-02-24 23:37 | 本・出版
c0016141_22295758.jpgしばらく本ネタが続きます。
お金がらみの本はもういいよ、という人は、うってかわって、こんな本はいかがでしょう?

小悪魔セックス

昨年惜しまれつつ引退した(って、我ながら詳しいな)穂花穣による、「二人で一緒に気持ちよくなりたい」男女のためのセックス本です。

個人的には目からウロコ落ちまくりの名著なのですが、内容が内容なので、今回は比較的、ソフトな部分をご紹介します。

(女の子にオススメの小悪魔テクとして)飲みの席では、彼氏がいなくても、とりあえず「いる」と答えてください。
それでも迫ってくる男の人こそ、「本物」だからです。

男の人に言っておきたいのですが、彼氏の有無で口説くかどうか判断している時点で、本当にその女の子に興味があると言えますか?
(中略)
振られる可能性がある子は避ける――わからないでもないですが、私のように、彼氏はいなくても、「いる」と答える小悪魔タイプはけっこう多いのです。女の子は、そう言ったときの男の人の反応を伺っているのです。
彼氏がいる、と言われて、すぐに諦めてしまう男の人は、自分が傷つきたくない、恥ずかしいことを晒したくない、自己中心的なタイプなのだろうなぁ、と思います。
ううう、自己中心的なタイプですか。いや、穂花穣が言うなら、きっとそうなのでしょう……

僕自身、すでに彼氏がいる女の人に粉をかけるというのが、どうも気がすすまないのですが、その何パーセントかは自信のなさの裏返しなのかもしれませんね。

しかし、どうせなら、彼氏が「いる」という女子の攻め方も書いてほしかったなぁ。

次回作はぜひ『小悪魔ラブ』か『小悪魔婚活』を!
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by aru-henshusha | 2009-02-24 22:57 | 本・出版
最近「お金」にまつわる本を、書店でよく見かけます。
こんな時代だからこそ、お金の作り方から増やし方、守り方、使い方まで注目が集まっているということなのでしょう。

僕自身、ここ数日、立て続けに3冊の「お金本」を読んだので、それぞれ簡単な感想をメモしてみます。

c0016141_2135590.jpg①『この世でいちばん大事な「カネ」の話

この本は、あらゆる人に、問答無用で読んでもらいたい一冊。
一言で言うなら「幸せになりたいなら、ちゃんとお金を稼ごう」ということが書かれています。

こう言うと、「幸せはお金では買えない!」なんて反論する人が出そうですね。もちろん、そういう考え方も部分的には正しいと思います。

けれど、サイバラがこの本で突きつけてくるのは、そういうキレイゴトが通用しない、どうしようもない貧しさを身にまとって生まれてきた人たちの話です。

生まれた国が貧しい、街が貧しい、家庭が貧しい……、そんな環境に生まれてしまったがばかりに「負のループ」からなかなか抜けられない人間にとって、「カネを稼ぐ」とはほとんど唯一の脱出の手段であり、「希望」でもあるんだなということが、よくわかります。

また、「カネ」と「別れ」を軸にした、西原理恵子の自伝としても読めますので、サイバラ・ファンは必読です。


c0016141_2151275.jpg②『世界一受けたいお金の授業

書店に並んでまだ1週間程度だと思うのですが、けっこう売れているらしい一冊。本書のベースになった授業が「カンブリア宮殿」でも取り上げられたとかで、話題性も十分です。

この本のウリを一言で言うと、「見えなかったお金(の流れ)を見える化する」となるでしょうか。

実際、こちらのブログにあるような図(ブロックパズル)1つで、家計簿からスタバの決算書、国家財政までがざっくり読み解けるというのですから、かなりの優れものです。

ただし、この図の原型は『戦略会計STRAC 2』という本の中にあるSTRAC表というものだとか。

こういう便利なツールをアップデートして「見える化」したのが、著者の一番の功績かもしれません。


c0016141_2191845.jpg③『頭のいいお金の使い方

こちらは、「<投資>という観点から、どんどんお金を使いましょう」というスタンスの本。

といっても、金融商品への投資より、自分への投資・他人への投資についてページが割かれており、僕みたいに株もFXもやらない人間にとって、かえって興味がわく内容でした。

ただ、気をつけたいのは、この本の内容を「使いこなす」には、それなりのリテラシー、頭のよさが必要だということ。

たとえば、「収入の半分は自己投資に充てる」という項目を読んだそばから、高額セミナーにバンバン申し込んだり、アマゾンでビジネス書を大人買いしちゃうような人は、気をつけたほうがいいと思うんですよね。

自分への投資って、お金を使えば即リターンがあるわけじゃなくて、お金を使って得た情報・人とのつながりをどう実生活に生かしてくか(実行するか)で、リターンにつながるもののはず。

そういうわけで、書かれている内容と今の自分をくらべて、合うノウハウだけチョイスして試してみるのが、この本の「頭のよい使い方」ではないかと。


以上、3冊紹介をしましたが、全部読みたいという人は①→②→③の順で、あえて1冊選ぶなら①がオススメです。

もちろん、これ以外にも「お金本」はたくさん出ているので、興味がある方は書店などでチェックしてみてください。

我ながら、めずらしく(?)、ビジネス書業界に貢献した気がします……
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by aru-henshusha | 2009-02-24 22:08 | 本・出版
新年もあけて早二週間たちますが、これが今年の初エントリとなります。
「100年に一度の危機」とやらを意識したわけではありませんが、まずはお金の話から。

下に転載するのは40年近く前の出版社の初任給(高い順)。

・各社の初任給

       大卒     高卒

岩波書店   50,901円   40,071円
日本評論社  38,800円   33,000円
正進社    38,300円   29,000円
平凡社    37,250円   30,200円
中央公論社  37,050円   26,250円
光文社    35,310円    -
小学館    35,260円   26,820円
集英社    35,260円   26,820円
河出書房   35,100円   27,700円
リーダイ   35,000円   27,500円
医歯薬出版  34,300円   28,300円
講談社    34,135円   26,850円
角川書房   34,120円   29,460円
中央経済社  34,000円   25,000円
医学書院   34,000円   27,600円
有斐閣    33,600円   28,000円
南山堂    32,300円   26,800円
       (以下略)
(出版労協調べ・昭和42年8月現在)
*(引用元:鈴木 敏夫 氏より (書籍「出版~好不況下興亡の一世紀」より)


で、次が最近のデータ。

順位 出版社名 初任給(大卒)
1位 福音館書店 432,850 円
2位 マキノ出版 303,650 円
3位 医歯薬出版 297,955 円
4位 医学書院 284,000 円
5位 集英社 276,055 円
6位 小学館 260,177 円
7位 芳文社 258,400 円
8位 南江堂 256,120 円
9位 光文社 254,600 円
10位 ダイヤモンド社 249,542 円
11位 東洋経済新報社 248,355 円
12位 中央法規出版 242,973 円
13位 主婦の友社 241,554 円
14位 大修館書店 240,900 円
15位 岩波書店 240,000 円
16位 学習研究社 236,800 円
17位 日本実業出版 235,000 円
18位 世界文化社 235,590 円
19位 日本文芸社 233,700 円
20位 新美容出版 232,200 円
※出版労連「出版産業賃金労働条件資料集2007年」より
(引用元:主な出版社の初任給


さて、「かたい」ところほど高い、と言ったのは、いわゆる大会社だけを指した話ではありません。

規模は小さくても、医学だとか教育だとか経済だとか、「かたい」内容の本を多く出している会社の場合、本の単価が高く、また教科書として採用されることも多いので、「かたい(=安定した)」経営状況を反映し、初任給も高くなるケースが多いようです。

*もちろん、以上は出版労協(→労連)に加盟している会社のデータの抜粋ですから、そうじゃない会社で初任給が高いところもあるでしょうが


しかし、給料ネタは折に触れやっていますが、書き終えたあと、毎回言い表しようのない虚しさを覚えるのはなぜかしら……
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by aru-henshusha | 2009-01-14 22:52 | 本・出版
c0016141_15563910.jpgこれから紹介する本は、かなり前に担当編集者の方からいただいた。

読書は1冊のノートにまとめなさい

なかなか紹介できなかったのは多忙だったせいもあるけれど、もう一つ理由がある。

正直に言うが、この本をどう評価していいか迷ったからだ。

「同業者」としては、本書は高く評価すべきだろう。


ベストセラー『情報は1冊のノートにまとめなさい』の続編として多大な期待を受けてきたであろうこの本を、著者と編集者の方々はうまくまとめ上げたと思う。

たとえば、本書の構成の核となる 「インストール・フロー」は、その好例だ。

  1 探す(探書リスト作成)
  2 買う(指名買い)
  3 読む(マーキング)
  4 記録する(読書ノート作成)
  5 活用する(検索テキスト作成)

という段階にそって本文が展開し、第1章には、全体の流れのごく簡単なサマリーまでついている。
この通り実践すれば、著者が編み出したノウハウを無事「インストール」できるだろう。

同業者から見て、この本には、お世辞ではなく「いい仕事がされている」。
しかしながら、「一読者」として、僕はこの本には満足していない。



この本のカバーには、「多読・速読より、一冊ずつきちんと頭に落とす読書術」というコピーがある。

この言葉どおり、1冊の本を驚くほど短い時間で読む方法も、大量の本を読んで得た知識をビジネスに生かしてリターンを得ようなんてメッセージも、本書には書かれていない。

この本が扱うのは「まっとうな読書(&情報整理)」のノウハウだ。
しかし、そのまっとうさゆえに、それらのノウハウには新鮮味がほとんど感じられない。


僕らのように編集という職に就いた者で、「一冊ずつきちんと頭に落とす」ことを一度も意識しないで本を読んできた人間が、どれだけいるだろう?

仕事であれプライベートであれ、僕らは本の内容を思う存分享受するために、それぞれの読書術を日々磨いているはずだ(きっと、本書の担当編集者の方も)

だから、この本に書かれている大抵のことは僕は実践(あるいは理解)しているし、一部のノウハウは自分に合わないと思って止め、一部のノウハウはよりよいと思う方法で導入済である。

たとえば、本書で言う「探書ノート」は「はてなブックマークのコレクション機能」を代用している。
「読書ノート」のかわりとして、このブログには、よいと思った本の書評をアップしている。
読んだ本の書誌的な記録は、ブログのライフログに任している。
(よく考えたら、これも「はてブ」で代用できそうだが……)

そういう「読者」としては、この本は「いい本」だけど、何かが足りない。
僕は今さら自分の読書生活を、「1冊のノートにまとめたい」とは思わない。



最初に書いたように、今でも僕は、この本の評価を迷っている。

「他社の商品」として見たとき、この本は素晴らしい一冊である。
けれど、「自分が読む本」としては、この本には、やはり何かが足りない。

いい!と思える本というのは、自分にとってまったく新しいことが書いてある本というより、結局、自分自身の考えを後押ししてくれるもの、というか、薄々知っていたことを証明してくれる本。」と言った方もいるけれど、こと読書関連の本については、僕はそう思わない。

読書は僕にとって、多分死ぬまで欠かせない行為である。
だから、本の少しでも新しい読み方、違った本の楽しみ方を教えてくれるような本に、僕は出合いたい。

*追記:そのような意味で、以前、僕が感銘を受けたのが以下の本だ
→『本の読み方 スロー・リーディングの実践


*当ブログへの献本は、以下のルールに則っていただける限り、歓迎いたします。
当ブログへの「献本ルール」を、ここらでハッキリ決めようと思います。
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by aru-henshusha | 2008-12-25 18:16 | 本・出版
c0016141_2264865.jpg就活のバカヤロー

という、一度聞いたら忘れられないタイトルのこの本は、かなり前に著者から献本いただきました。

多忙で紹介できないうちに、あれよあれよと売れて(→「就活のバカヤロー」新書がバカ売れ 学生も企業も大学も茶番?著者ブログによれば現在7万部突破とか)、けっこうな数の書評もされているご様子。

いまさら内容を論じるのもアレなので、今回はこの本のタイトルに絞って記事を書こうと思います。


さて、僕は著者とは古い付き合いということもあり、本が出る前からこのタイトルについては聞かされていました。

最初は、たしかにインパクトがあるタイトルだと思いましたが、けれど、その「言いっぱなし(タイトルが先行しすぎで、中身がよくわからない)な感じ」が多くの読者に受け入れられるのかどうかは、内心、心配もしていたのです。

しかし、フタをあければ、本書は売れに売れています。
これは、就職状況の急激な悪化の追い風も受けているとは思うのですが(注 就職難のほうが就活本は売れるので)、やはり、このタイトルの力も大きいでしょう。


後出し承知で言いますが、このタイトルは「シューカツ」に翻弄される学生、また、そんな学生に振り回される大学・企業の「心の叫び」を、どストレートに表現しています。

僕自身、出版社を数十社受け、不採用通知の嵐に見舞われていた学生時代は、まさに思いっきり「バカヤロー」と叫びたい毎日でした。
けれど、喉元過ぎればなんとかで、この業界に勤めてウン年たつと、その感覚を忘れてしまうのですね。

その点、本書の著者や編集者は、学生・採用担当者・就職課の職員という、立場が異なる3者に共通する叫びをすくいあげている。

「バカヤロ」ーという乱暴な響きのわりには、これは随分と「頭のいい」タイトルなのです。


それにしても、我ながら、売れた後にああだこうだ言うほど簡単なことはないですね。

この本を世に出す前から、ある程度の確信を持ってこのタイトルをつけた関係者たちの「頭のよさ」を讃えて、記事のシメとさせていただきます。


*当ブログへの献本は、以下のルールに則っていただける限り、歓迎いたします。
当ブログへの「献本ルール」を、ここらでハッキリ決めようと思います。
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by aru-henshusha | 2008-12-15 22:44 | 本・出版
先のエントリ(『書評王の島』vol.2の、匿名編集者座談会「書評メッタ斬り!」に参加しました。)でも紹介した冊子、『書評王の島』に、豊崎由美(正確な表記はリンク先参照)さんによる、作家朝倉かすみさんのインタビューがある。

その中でドキッとしたやりとりがこれ。
豊崎  アマゾンのレビューはどうですか?
朝倉  出ていれば読みますね。
豊崎  決して好意的なのばかりでもなかったりしますよね。
朝倉  ええ。それはネットのレビュー全体がそうですけれども。書いている人はどこまで意識しているんだろうと思いますね。自分の「読み」や表現のレベルをだれでも読める場所にさらしているわけでしょう。
豊崎  よくあんな怖いことを原稿料ももらわずにできるなと、私も思います。雑誌のライターをやっていて救われているのは、1カ月もあったらこの世から消えちゃうからですよ。ブログでレビューを書いている人たちは、自分の文章がずっと残って検索されていくことの怖さを知っているのかな。
今年の頭から「献本」というコーナーまで設けて、けっこうな頻度で書評(みたいなもの)をやっている自分としては、この「怖さ」は常に心の片隅にある。


そもそも、僕自身は編集者として、その本のよいところも悪いところも、著者と担当編集者が一番知っている(はずだ)と思っている。

だからこそ、著者や編集者から送られた本に、ここがよいとか悪いとかを僕が言うのはとても勇気がいるし、その「読み」が的外れでないだろうかという不安もあれば、その本の特徴を自分の稚拙な文章で表現できるだろうかという心配もある。

言うなれば、書評という行為は、「その本を読んだ自分が丸裸になること」だ。
持ち前の厚顔で、毎回思い切りよく脱いではいるけれど、裸の自分をさらすのに恥を覚えなくなったわけではない。


それでも脱ぎ続けるのには、多分いろいろな理由がある。
ひとつだけ月並みな言い方をすれば、「ありのままの自分を見せられる場所がほしい」ということだろう。

前にも書いたが、「自分がその本を読んで、そのときに感じたことを、ありのままに書く」というのが、書評をする際に、僕が自分に課した唯一のルールである。

人様に見せられるような体も精神も持ち合わせていない僕だけど、ありのままの自分を、飾ることなく表現できる場所がほしいのだ。

いまはまだ、怖さよりも開放感のほうが勝っている。
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by aru-henshusha | 2008-11-16 23:23 | 本・出版
c0016141_22211362.jpgめずらしく宣伝エントリを。

先ごろ、書評家の豊崎由美(正確な表記はリンク先参照)さんが責任編集されている冊子、

『書評王の島』vol.2
(*詳しい内容はこちら→島本第2弾制作記録その5
*通販以外に、お店でも買えるそうです→書評王の島ニュース


の座談会に参加しました。

題して、匿名編集者座談会「書評メッタ斬り!」

匿名座談会に出ましたぁというのも変な話ですが、「ある編集者」自体が匿名ですので、カミングアウトしても問題はないかと…
(ちなみに、僕は「ビジネス書編集者のFさん」として、参加しています)


座談会の内容は、「編集者にとってうれしい書評」や「信頼できる批評家、できない批評家」「けっきょく書評は必要か」などについて、一部実名を交えながら、つっこんだやりとりが繰り広げられています。

僕自身、ビジネス書の(おもにブロガーによる)書評の現状・問題点等について、かなり率直に話しました(原稿チェックのときに「う~ん、言いすぎた」と思うところがありましたが、ほとんど赤字は入れていません)

テーマがテーマですが、本好きな方(もちろん、業界関係者や書評ブロガーにも)にはとても面白い内容だと思いますので、興味のある方はぜひリンク先もチェックしてみてください。
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by aru-henshusha | 2008-11-16 22:54 | 本・出版