ベストセラーを作ったからといって、編集者が喜んでいるとは限らない。
2005年 03月 20日
その方が作った本は、何万部まで部数を伸ばすかはわからないが、いわゆる「ベストセラー」になることはほぼ間違いない。
「**さん、すごいじゃないですか」
そんな声が、次々にパーティー参加者からかけられる。
だけど、彼は、その本を編集したことを、あまり喜んではいなかった。
その本は、たしかに「売れる本」である。
しかし、残念ながら、「いい本」とはいえまい。
その本は、10年、20年と読みつがれる本ではない。
1年間で売れるだけ売って、あとは人々の記憶から消えていく類の本である。
担当の編集者自身も、それは十分わかっている。
彼は、その本を持ちながら、このようなことを言っていた。
「こういう売れる本を作って、あとは売れなくてもいいから、いい本を作るだけさ」
編集者として、「いい本で、売れる本」を作れれば、それにこしたことはない。
けれど、「いい」と「売れる」は、必ずしも一冊のなかに同居する要素ではない。
「いい本」を作ろうとすれば読者を選び、「売れる本」を作ろうと思えば内容は薄まる。
(もちろん、すべての本がそうだとまではいわない)
でも、だからこそ、編集者は年に1冊でも2冊でも、売れる本を作らなければいけないのだと思う。
いい本ばかりを作っていても、会社はどんどん傾いていく。
そのうち、本を作る機会までも奪われかねない。
売れる本を作れれば、編集者は嬉しい。
なんて、そんな単純な公式だけで、世界は成り立っているわけではない。
嬉しさの中にも、いくばくかの「憂い」は含まれている。

