作家の条件って、何ですか?
2005年 10月 30日

今日は珍しく、いま読んでいる本で見つけたネタを。
文春文庫で出て間もない、『清張さんと司馬さん』という本に、こんなエピソードが紹介されていました。
舞台は外国のホテル、当時朝日新聞の記者の森本氏に、清張氏がこんな質問を投げかけたそうです。
「きみ、作家の条件って、何だと思う?」
「才能でしょう」と森本さんが答えると、ニヤリとしながら、
「違う。原稿用紙を置いた机の前に、どのくらい長く座っていられるかというその忍耐力さ」
「え、そんなんでいいのかよ?」と思ってしまいそうな話ですが、ある意味、真実をついている言葉だと思います。
ある人にどんなに才能があろうとも、それが「形」にならない限り、大した意味はありません。
作家の才能は、「本」や「原稿」にして、初めて意味があるものです。
その過程で、忍耐力は当然必要になるでしょう。
同じようなことは、じつは編集者にも言えます。
僕らの頭の中にどんなにいい企画があろうとも、それは「形」にしなければ、ただの空想です。
企画を通して、著者の原稿を受け取って、それを編んで、本にして初めて意味がある。
こういう言い方は失礼ですが、僕の知っている編集者に、お世辞にも才能に恵まれているとは言えないけれど、「形」をつくるのが得意な人がいます。
彼は、僕の知るほかの誰よりも「本」をつくることに注力し、その過程でどんどん成長していきました。
その成長は、頭の中で企画を弄んでいるだけでは、決して生まれなかったものだと思います。
当たり前のことでしょうが、「まずやること」、「とにかくやりぬくこと」は大事です。
けれど、それをしないで言い訳ばかりしている人たちは、思いのほか多いのかもしれません。