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ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

「、」ひとつでクビが飛ぶ?! 恐ろしき文芸編集者の世界。

事あるごとに書いているのだけど、僕は「非文芸」の編集者である。
前の会社でも今の会社でも、「非文芸」の書籍ばかり作っている。

なので、こういう話を読むと、まるで異次元の世界で起きているお話のように思えてしまう。

校正出し20回なんて、考えたくないや(未公認なんですぅ)

文芸系の本では、文体(文のリズム)こそが著者の個性。どんな理由があるにせよ、リズムにこだわって書いた原稿に勝手に手を入れられては、そこでリズムの狂いが生じ、「自分が書いた本」として自分の名前を出せなくなってしまうのだとか。

だから、校正紙を出す前に「プリ校正紙」のようなものを用意し、明らかな誤字脱字や漢字の開く・閉じるの統一をするといったこと以外の、文章そのものに手を加える場合はすべて、プリ校正紙上に鉛筆で「提案」というかたちで書き込み、その提案を採用する・しない、あるいはそれを受けて文章を書き直すなど、すべて著者にやってもらったうえで校正紙を出すんだとか。


なるほど、文芸ってのはこういう世界なのねと感心するが、「非文芸」の世界の住人にはこんなことは物理的に不可能だろう。

まずは頂いた原稿をデータ上で校正し、ゲラを出したときにその時点での疑問、内容確認などを明記して最大1週間程度で著者からゲラを戻してもらう。

そのやりとりを2回(ときには1回)で終わらせないと、「非文芸スケジュール」はとてもじゃないがこなせないと僕は思う(何せ、年間10点、20点は珍しくない世界だから)。

こういう言い方は悪いが、たった一文字トル・トラナイで意見を交わしている暇はない。
(もちろん、文芸はその「たった一文字」を大事にしなければいけない芸術だと、僕も思っているけれど)

ちなみに、たった一文字で思い出したけど、とある大物著者の文章から黙って「」を削除して、クビになりかけた文芸編集者の話を聞いたことがある。

その編集者、もともと「非文芸」出身だったんだよね。

郷に入っては郷に従えとは、まさにこのことか。
by aru-henshusha | 2005-10-31 21:54 | 本・出版