2人のことは、2人にしかわからない。(ヒトリゴト。19)
2005年 11月 15日
2人は1つの部屋の中にいる。
その部屋には1つも窓がない。
そこで何が起きているかは、外の人には見えやしない。
いま、2人のうち、1人が部屋から出てきた。
もう1人は、まだ部屋の中にいる。
出てきた1人は、部屋の中で起きたことを話す。
他のみんなは、一生懸命その話を聞いている。
「あの部屋の中で、こんな辛い出来事があったんだ」
「あの部屋の中で、こんな悲しい出来事があったんだ」
「あの部屋の中で、こんな許せない出来事があったんだ」
まわりのみんなは、一生懸命うなずいている。
誰も、部屋の中で起きたことを見てもいないのに、一緒になって怒ったり悲しんだりしている。
いま、もう1人が部屋を出た。
みんなは、先に出てきた1人のかわりに、後から部屋を出た1人をなじる。
「あの部屋で、こんなことが起きたって、みんな知っているんだぞ」
見てもいないことを、見てきたかのように、みんなは言う。
知りもしないことを、知っているかのように、みんなは言う。
「あの部屋で起きたことは、2人にしかわからない」
「2人のことは、2人にしかわからない」
そうとだけ言って、後から出た1人は部屋に戻る。
君らが何でもお見通しなら、いま、部屋で何が起きているか、当ててごらんよ。