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ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

最終的に本を「裁く」権利は、読者にある。

仕事に追われて、これらの記事をスルーするところでした。
編集者の端くれとして、まことにお恥ずかしい。

『テロ死/戦争死』は死なず(版元ドットコム)

トーハン仕入担当者の思いがけない一言を耳にするまで、私は極めて楽観的だった。(注 『テロ死/戦争死』に)収録された写真はいずれも生々しい死の現場ばかりだが、イラク戦争の、あるいは「テロとの戦い」の現場のありさまをストレートに伝える写真ばかりだ。(中略)サマーワの自衛隊の撤退も含めて、全国の書店の棚で話題をさらうのではないか……。
「これはうちでは委託で扱えませんね」 このひとことですべてがふっとんだ。
午後になって担当者から正式に断りのTELが入った。「残酷すぎて書店がいやがる」「子供が見たら教育上よろしくない」の二点が理由だ。書店がいやなら返品すればいい、子供に見せたくないから即書店に置かないなんてナンセンス、と反論したが、全く無理。
日販も全く同じ理由でダメ。
(中略)
栗田も中央社もゼロ回答。TRCも予約キャンセルしてきた。大阪屋がやっと100部、太洋社が20部の委託。初版3000部で委託合計150部ではキツすぎる。


第三書館VSトーハン(ウラゲツ☆ブログ)

私はこの写真集の中味を見たわけではないので、本についての感想は書きませんが、取次各社が「拒否」した経過は想像に難くありません。ただ、内容の是非はともかくとして、一社が拒否したことを、その他の取次が拡販のチャンスと捉えなかったのは何とも「残念」です。
(中略)
取次に新刊の見本出しをしたことのある営業マンなら、恐らく誰しも、心情的には似たような「攻防」を経験したことがあるはずです。私も当然あります。


自分は編集プロパーで、取次での「部決(部数決定)」の経験もないから、このへんの事情には疎いのだけど、こんなケースがあるんですね。

僕も「ウラゲツ☆ブログ」さん同様、本の中身を見ていないので、滅多なことはいえません。
ただ、少なくとも、「残酷すぎて書店がいやがる」「子供が見たら教育上よろしくない」といった取次の人の意見(どこまでホンネか知らないけど)には違和感を感じてしまいます。

そういうのは、書店や読者自身が感じることであって、取次の人がへたに忖度することでもないし、ましてや委託を拒否するなんて。

最終的に本を「裁く」権利は、読者にあるんじゃないのかねぇ。

「読者の審判」をへて売れなかったらあきらめもつくけど、売る前からあれこれいってもさ。
出版社から取次まで、僕らは全部、裁かれる側の人間かと。

追記:元記事を読めばわかりますが、『テロ死/戦争死』は書店からの直接注文のおかげで、全国の店頭で並んでいるようです。
by aru-henshusha | 2006-01-15 16:23 | 本・出版