「売れない」と言われつづけた本が売れたときほど、嬉しいことはない。(ヒトリゴト33)
2006年 02月 16日
ひとつは、「売れて当然」と思われて、本当に売れた本。
もうひとつは、「こんなの、売れるわけないじゃん」と思われながらも、売れてしまった本だ。
前者の場合、その本が売れても、多少喜びが割り引かれるように思う。
著者が有名だったり、旬のテーマを扱っていたりすれば、編集者としても多少は部数の「計算」ができるから。
いっぽう、後者の場合、その本が売れた喜びは、何とも言えないものである。
何せ、上司や営業、同僚からさえも「売れないよ」と言われた本が、予想外の売れ行きを示すのだから。
最近、僕は幸運にも、後者の経験をした。
いや、その本はまだ発売して間もないから、今後どっと返品が来る可能性もある。
だけど、ある種のジャンルの本としては、予想外の出足を記録しており、多少の期待はできそうだ。
この本の企画を立てたとき、僕は、笑っちゃうくらい色々な人から「売れないよ」と言われた。
たしかに、著者は無名の人だし、テーマも旬のものとは言えなかった。
何より、人によっては「そんなもの、俺、知らない」とまで言われた。
「知らないもの」を売れると言い張っても、信じてもらえないのは無理もない。
だけど、僕はこの本は「そこそこ売れる」んじゃないかなぁと思ってた。
気障な言い方だけど、この本の需要を、僕は皮膚で感じていた。
実際の編集作業は「辛い」の二文字しかなかった。
本を一冊つくるたびに、自分の努力が無駄ではないかと心配になる。(ヒトリゴト32)
にも書いたように、年末年始はこの本のために、頑張って頑張って。
だけど、ときには、その努力がただの徒労なんじゃないかと心配になって。
でも、その努力が100%無駄ではなかったみたいだから、いまは本当にほっとしている。
どんな本でも、編集者である限り、売れれば嬉しいはずだと僕は思う。
けれど、これほど「売れない」といわれ続けた本が売れているときの喜びは格別だ。
やっぱり、できの悪い子ほどかわいいよ。
そして、できの悪い子ほど、案外立派に成長したりするもんだ。