だれが「著者」を殺すのか。
2005年 01月 22日
当然と言うべきか、彼の連絡先を知りたいと言う電話が、他社から殺到した。
しかし、その会社は、彼を囲い込んだ。
他社から電話が来るたびに、「著者は今忙しい。私から彼に聞いてみる」と担当編者者が答え、どの出版社にも連絡先をいっさい教えなかった。
まあ、はなから会社の上層部とその著者の間で、他社の本は書かないという約束にはなっていたようだけど。
その後、その著者は、何冊かその続編を書いた。
出すたびに売上部数は落ち、彼の名前は、いまや一般から忘れ去られている。
いま思えば、あのとき、他の会社からも本を出すべきだったのだ。
もちろん、他社から本を出す代わりに、会社の売り上げは減る。
けれど、他社の編集者と接触することで、きっと彼の違う一面が引き出せたはずだ。
同じ会社の、しかもあまり有能とはいえない編集者とばかりタッグを組んでいては、著者はどんどん錆びていく。
僕の中では、あの著者はもう「死んでいる」。
聞くところによると、やっと他の版元から本を出すそうだが、時すでに遅しという気がしなくもない。
かわいい著者には、ときに旅をさせることが必要だ。
過保護な会社と編集者が、知らず知らずのうちに「著者」を殺している。