アクシデントへの対応に必要なのは、早さ・正確さ・わかりやすさ。(ヒトリゴト44)
2006年 07月 30日
上のアクシデントが起きたとき、僕は偶然にも、東西線の九段下駅のホームで、中野方面への電車を待っていた。
このとき、駅員が最初にしたアナウンスは、
「門前仲町で車両故障が起きたため、九段下―中野間で折り返し運転が行なわれる予定です」
といったものだった。
このアナウンス、現場で聞くと、正直、よく理解できなかった。
僕および、ほかの客が知りたいのは、
「自分が乗るべき電車がいつ来るのか、それに乗るにはこのまま待っていればよいのか」
という一点のみである。
しかし、このアナウンスでは、それに対する情報がほとんどない(ように僕や客の大部分には思えた)。
「折り返し運転」というからには、多分、反対方向(葛西方面)に進む電車が九段下で折り返すということなのだろう。
ならば、その電車に乗るには、自分たちは反対側のホームに行くべきなのか?
いや、でも、もしそうだったらその旨のアナウンスがあるだろう。
そもそも、「折り返し運転が行なわれる予定」というぐらいだから、もう少し待つなり、駅員に詳しく事情を聞くなりしてみよう。
こんなことを考えているうちに、反対側のホームに電車が来た。
特にアナウンスもなかったから、あれはそのまま葛西の方へ向かうのだろう。
あちら側の人は電車に乗れていいなぁと、僕は単純に思っていた。
ところが、いざ電車が動き出す寸前に、この電車は中野行きです、とアナウンスが告げたのだ。
僕やほかの客は、向かい側のホームを唖然として見つめていた。
(いっぽう、この事実に気づかなかった客も少なからずいたようだ)
僕は数人の客とともに窓口に向かい、駅員に事情を聞く。
だが、この時点では駅員自体が、事情を飲み込めていなかった。
「え、向かい側から出たんですか?」
と驚く駅員。あわててどこかに電話をかけて、ぐずぐずと話し込んでいる。
このころになると、客の中には興奮しだす者もいて、「一体どうなってんだ!」と駅員にキレるわ物を投げるわで、イヤ~なムード。
いっぽう、年をとった駅員は、
「さっき、お客さんに怒られてさ~、ねぇ、(中野方面行き電車は)そっちから出んの?」
「こっちだって、どうなってるのかわからないんですよ~」
と、事態を解明しようとしつつも、緊急さは感じられない。
そうこうしているうちに、また向かい側のホームに電車が来た。
これが中野方面行きへの電車かとの問いにろくに答えられない駅員を尻目に、僕と数人の客は、反対側ホームへの連絡通路に駆け込んだ。
けっきょく、それは中野方面行きで、とりあえず僕らは一安心。
しかし、こちら側のホームに中野方面行き電車が来たというアナウンスはきちんとされず、自力で気づいて「駆け込みアウト」になった客が何人もいた。
いやはや、状況説明に行数を費やしすぎてしまったが、あの場で感じたことを手短かに書こう。
べつに客の大半は、アクシデントが起きたことを怒っているわけではない。
車両故障というものがどれくらいの確率で起きるのかは知らないが、毎日営業していたら、そういうことだって起きるだろう。
だけど、あの応対だけはいただけない。
いつまでたっても、正確な情報が、一般客に理解できるようなかたちで広まらない。
利用者としては、それほど腹立たしいことはない。
駅員の間でも情報が錯綜したのかもしれないが、「いち早く、正確な情報を、わかりやすくお届けするため頑張っています」という態度すら見られないのでは、怒る客だって出るだろう。
(だからといって、キレたり、物を投げつけたりしてもいいわけではないが)
あのとき、東西線九段下の駅員には「早さ・正確さ・わかりやすさ」が足りなかった。
もっと言えば、その三点が大事であるという認識さえも、僕には見受けられなかった。
あるのは、「何で俺が勤務してるときに、こんなことが起きるんだよ~」という面倒な表情だけ。
でも、あのときホームにいた客の誰もが、同じようなことを思っていたのは忘れないで頂きたい。