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ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

英治出版は、いつまで「絶版にしません!」と言い続けられるのか?

「絶版にしません!」(Eijipress blog)
昨日の夜8時ごろ、一本の電話がかかってきました。

「あの~、すみません。ちょっとお聞きしたいんですけど・・・もしかしたらもう廃盤になっているかもしれないんですけど、『ルナ』って絵本なんですが、ありますか?」

そのどことなくかぼそい声から、とっても不安げな感じが伝わってきた。

「はい、『ルナ』でございますね。在庫ございますよ。弊社の出版物は絶版しませんので、かならずお客様の手元に届きますよ」

「えっ、あるんですか! 本当ですか? あぁ~よかった~とってもいい本だな、と思って・・・・・」声の調子が一気に転調して、その笑顔の音にこっちもつられてふたりで笑ってしまった。
この記事を読む限り、英治出版には<自社の出版物を絶版にしない>というルールがあるらしい。

これは、すごいことである。


年度末の在庫(パンダのため息)

上の記事を読んでいただくとよくわかるが、本の在庫には(それが売れていようとなかろうと)税金がかかる。
また、自社の出版物が増えれば増えるほど、本を納める倉庫の費用などもかさむだろう。

だから、「絶版にしない」ということは「金ばかりかかって、売上にならない在庫(ようは売れない本)をためこむリスク」を永久的に背負い込むということを意味する。


もちろん、そんなことは百も承知で、英治出版はこの方針をとっているのだろう。
「絶版にしない」ということは、出版社として(出版点数が増えれば増えるほど)とても体力のいることだと思うけど、「残す」「記録する」「収集する」という、気が遠くなるほど繰り返されてきた文化を伝えるという、地味~である意味オタクちっくな作業に愛しさを感じることもしばしば。
という心意気はまことに素晴らしい。


とはいえ、会社がさらに大きくなり、出版点数の桁が変わるぐらいまで成長を遂げたとき、同じことを言っていられるだろうかという疑問は禁じえない。

むろん、そんな心配をよそに、どんどん活躍していただきたい版元の一つではあるのだが。
by aru-henshusha | 2006-11-10 13:25 | 本・出版