山田真哉の決断は、たぶん正しい。
2006年 11月 27日
まあ、見出しなんで、それはご容赦いただくとして。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』が150万部(!)を突破した山田真哉氏の、2年ぶりの新作が来年に出るらしい。
しかも、『さおだけ~』の続編というスタイルをとらずにだ。
なぜそのような形で出版されることになったのか、彼自身はこう説明している。
2年ぶりの新作発表(『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』100万部?日記)
続編は出したい、とは思っていました。というわけで、彼は続編はおろか、若干テイストが似ていると思われる『マスオさん~』の執筆も中断して、さらに新作を書こうとしているのである。
『さおだけ屋は~』と同じような内容で『○○屋はなぜ潰れないのか?』という本を出せば、
期待値だけで20万部ぐらいはいくだろう、ということも読めていました。
でも、それはイヤでした。
(中略)
じゃあ、全く別の角度で何かできないだろうか、ということで
『マスオさんはなぜ婿養子ではないのか?(仮)』という税金の入門書の執筆を始めました。
多くの人の力を借りて、半分まで書き終えました。
しかし、それ以上、書き進められませんでした。
‥‥理由は、まだはっきりと整理はできていないのですが、またちょっと間を置いたら
何らかの形で書き始めようと思っています。
人によっては、この決断を「もったいない」と思うかもしれない。
だって、リンク先もにあるように、続編の体裁をとれば「数字は読める」。
あるいは、『マスオさん~』だって、<身近な疑問からはじめる会計学>を<税金学>に横すべりさせた、半続編的な作品なのだ(と他社の人間には映る)。
それはそれで、まるっきりテイストを変えて新作を書くよりは、「安全」である。
でも、僕は山田真哉氏の、今回の決断は正しかったと思う。
(何でお前にそんなことを言われなきゃいけないんだ、との批判を百も承知で)
なぜって、仮に『マスオさん~』が出ていたら、「売れなかった」と思うから。
誤解をしないでほしいのだけど、この本が適切なタイミングで出ていれば、版元的に、あるいは世間的にはまずまず「売れていた」だろう。
けれど、山田氏自身が満足するまでのセールスには、たぶん届かなかったのではないか。
僕は、山田真哉という人に、個人的に面識はない。
(ブログ上でやり取りしたことはあるけれど)
だけど、彼がどれだけ「本を売りたい人で、かつ実際に売ってきた人」かは、そのブログを読む限り、あるいは業界の噂話を耳にする限り、十分わかっているつもりだ。
今度の彼の新作は、何と言っても<アフター『さおだけ~』>である。
何万部を狙ってるのか知る由もないが、この本は(『さおだけ~』超えは難しくても)いつも以上に売らなければと思っているのではないか、と勝手に推測していた。
だからこそ、その本が<税金>がテーマでいいのか、そのテーマでは著者が望む(と思われる)ほどの「広がり」は得られないのではないかと、他人事ながら気にかかっていた。
彼の2年ぶりの新作は、<数字>を扱ったものになるらしい。
(参考:2年ぶりの新作発表(つづき))
この本が、『さおだけ~』続編や『マスオさん~』の期待値以上の売れ行きを見せるのか、現時点では誰もわからない。
でも、当たれば広がるテーマには違いないし、(この、ある意味ギリギリのタイミングで)方向転換した価値はあるのではないか。
いろいろ生意気を書いたが、山田氏の今回の決断を、僕は素直にすごいと思った。
誰だって「新しいこと」をしないほうが楽だし、それでも、そこそこ結果はついてくるものなのだ。
けれど、それでも(危険で)新しい世界へ一歩踏み出す人たちが、出版界を元気にしてきたし、これからもそれは変わらないはずだと僕は思う。