スピーチは、短ければ短いほど、難しい。(あるいは、短いスピーチに大事な3つのこと)
2007年 03月 10日
というわけで、いま読みかけの本から、気になった言葉を紹介します。
ユーモアのレッスン
トマス・ウッドロー・ウィルソン(アメリカの第二八代大統領)は、歴代の大統領の中でももっとも演説がうまかったといわれているが、あるとき、こんなことを言った、と伝えられている。単純に考えると、長いスピーチを用意するには長い時間がかかり、いっぽうで、短いスピーチを用意するのは短時間で済みそうですよね。でも、実際はその逆だと。
「二時間の講演なら、いますぐでも始められるが、三〇分の話だと、そうはいかない、二時間くらい用意の時間がほしい。三分間のスピーチなら、すくなくとも一晩は準備にかかる」(134ページ)
これはきっと、「選び、捨て、削る」ことの難しさと関係しているのだと思います。
たとえば僕が、「編集者にとって大切なこと」というテーマで、一時間のスピーチを頼まれたとします。
このとき僕は、(一時間もつネタがあるかという問題は別として)普段から考えている「編集者にとって大切なこと」をいくつか書き出し、後はそれに適当な順番をつけて話していけば、何とかそれらしい話はできるでしょう。
ところが、もし同じテーマの話を三分間でやってくれと言われたら、僕は相当悩みます。
三分間という短い間で話せるポイントは一つ、ないしは二つぐらいでしょう。
一時間で話すときのように、いくつもの事柄は盛り込めません。
だから、「(重要なポイントを)選び、(余計なものは)捨て、(さらにそこから)削る」作業が必要になるわけです。
この作業は、話の制限時間が短ければ短いほど、困難なものになるはずです。
ちなみに、同じようなことは、当然、「文章」にも言えると思います。
ダラダラ長い文章なら大抵の人が書けますが、短い字数で言うべきことを言い切る文章を書くには、やはりそれなりの訓練やセンスが必要ではないでしょうか。