出版業界は、「北朝鮮方式」がまかりとおる世界なのか?
2007年 04月 24日
しかし、最近、出版社の人間とつき合うようになって、怒らないとわかってもらえない人たちが実に多いことに気づいた。修正案やアドバイスとして、指摘しているうちは、彼らには伝わらないみたいだ。たぶん、出版社の人たちは、そういうもの(ちょっとした不具合や苦情)に慣れきってしまっているのだろう。不具合が大きくなれば、そのときに頭を下げて謝れば良い、と軽く考えているようだ。結論から言えば、僕も「そういう人(編集者、その他業界関係者)はいるのかもしれない」とは思います。
予想どおりに悪い事態になったら、僕としては、「切り捨て」に移る。すると、ここでようやく、向こうは、僕が「怒っている」と認識するようだ。僕としては、もう怒ってなどいない。謝ってもらっても、まったく意味がない。筋違いというか、手遅れである。
そういった事態が本当に多いので、多少はお互いに学習した方が良いかもしれない。
出版界に10年いて理解したことは、「馬鹿正直に言うことをきいて、約束を守っていても馬鹿を見る」ということだろうか。もっと、作家らしく、締切を破り、約束はドタキャンし、書くよと言って書かない、というふうにしなければ、こちらの話はまともに聞いてもらえない、ということ。極端にいえば、締切を破る方が優遇される世界だ。だから、みんなこんなに締切を破っているのだな、それを交渉手段にしているんだな、と理解した。まさしく「北朝鮮方式」ではないか。しかし、ここにいるかぎりは見習う価値はあるかもしれない。
たまに著者の方から相談を受けるのですが、世の中にはホントとんでもない編集者がいて、通常の商習慣では考えられないルール破りを、平気でしでかしていたりします。
そういう場合、「そんな人とガマンして仕事をつづけても結局マイナスですよ。今までかけた時間はムダになるけど、その仕事、その人は切ったほうがいいです」とアドバイスしたこともありました。
けれど、この業界には、必ずしもそういう人間ばかりいるわけではありません。
自分がそうだとは言いませんが、少なくとも、僕がよく知っている(優秀な)編集者の方々は、著者や他の関係者にたいして、みな相当な気配りをされています。
上の例であれば、「ちょっとした不具合」をすぐに修正する、あるいはその不具合が起きる事情をちゃんと説明するはずです。
こういう言い方が適当かどうかはわかりませんが、「いい編集者に当たれば」さほどストレスもなく、いい仕事ができるのは事実です。
その意味で、(上の記事の書き手の)森さんは、これまで「悪い編集者の引き」が強かったのかもしれません。
最後に、僕も「北朝鮮方式」を駆使する著者に会ったことがあるのですが、そういう方と仕事をするとこちらも「麻痺」してしまうのですね。
「ああ、この人はあくまで交渉の<道具>として色々ムリをいってくるんだな。じゃあ、こちらもすべて誠実に対応するのも馬鹿らしいや」
そう思うと、ちょっとやそっとの<脅し>にはビビらなくなる。すると、相手はますます無理難題をふっかける。
そういう悪い循環が、これまで業界の片隅で脈々と続いてきてしまったのかなぁ、という気がしないでもありません。