タイトルとは、ようは「口説き文句」である。
2007年 06月 10日
タイトルとは、私にとって「礼儀」です。これは、山田真哉氏が考える、本の「タイトル」のあり方である。
付けなきゃいけないという意味で「儀式」であり、
内面にあるものを形にして外に表すという意味で「礼」です。
(中略)
コミュニケーションに欠かせない手段として必要になるのが「礼儀」です。
態度・服装・言葉遣いを整えることによって、相手への敬意を表するとともに
自己の内面を見える形にします。
いわゆる、「内面の表現」です。
本においても、表紙の装丁・帯、そしてタイトルで内面(中身)を表現します。
そして、礼儀と同じように本の表紙にも「お約束」があります。
各社の新書の表紙がシンプルなのも、
新書というのが「現代的教養を簡便に記したもの」であるという本質を表現した
お約束だなのだと思います。
そして、タイトルにもお約束があります。
「全体の内容を表現したもの」
「中身のイメージを投影したもの」
「読者の興味が引く内容を提示したもの」
「中身の本質を表現したもの」
などなど。
私はそのお約束の中から、想定する読者に合ったもの、時代に合ったものを
選択したに過ぎません。
「礼儀」という言葉をセレクトするあたりが、山田さんの人柄なのだろう。
至極まっとうな意見なんだけど、「そうですね」の一言で済ますのは編集者として芸がないので、自分なりのタイトル論を蛇足ながら付け加える。
僕にとって、タイトルとは「口説き文句」である。
この本と1、2時間でいいから付き合ってよ。絶対、損はさせないから。
というのを、あの手この手で表現するのが、編集者にとってのタイトル(あるいはカバー、帯を含めた表1)のあり方だと思っている。
だから、当然「誰を口説くのか?」というのも大事な問題だ。
もちろん、中には「俺は何人でもやりたい!(=読ませたい)」と思って、いろんな人を口説けるような、間口の広いタイトルを考える場合もあるのだろうが、あまり対象を広げすぎると、「口説き文句」のメッセージは弱くなる。
それよりも、ターゲットを絞り込んで、そこからずれた層の人には見向きをされなくても、狙った層だったら必ず落ちるような、特定の人たちに「刺さる言葉」「刺さるデザイン」を考えるほうが無難である。

むしろ、僕はこの本の帯のコピー、
「さおだけ」より「食い逃げ」
を高く評価する。
なぜなら、営業的観点から言えば、この本が『さおだけ』の第2弾だとアピールするのは必須であり、それもできるだけ短い言葉で、一瞬でわからせたほうがいい。
そして、「より」が効いている。
これは「口説き文句」で言えば、「前の男『より』俺のほうがぜってぇイイって」的ニュアンスを含む「より」である。
これは、本の中にも出てきた例の名物担当編集者の作ではないかと思うのだが、どうだろう?
こういうコピーがスラスラ出てくるのだとしたら、その人は実生活でもかなりモテるのではなかろうか。
追記:「食い逃げ」はいつかちゃんと書評を書きたいと思ってるのだけど、多忙で果たせぬままで、山田さんには申し訳ないと思っています。
とにかく、前作よりも面白いし、ビジネス書の編集者は必ず読むべきだと思う。
(なぜなら、僕らは「数字」の扱い方一つで売れたり、売れなくなったりする商品を作っているのだから)