本当に「したいこと」があるのなら、同時に「しないこと」も考えよう。(ヒトリゴト62)
2008年 03月 17日
こう書くと、いつもの冴えない(?)恋愛話を期待する人がいるかもしれないけど、そうではなくて。
僕が振られたのは、ある著者である。
このブログをよく読んでくれる人はご存知だと思うけど、僕の本業は「ビジネス書」の編集者だ。
ビジネスマン(&ウーマン)対象の本を作るのが仕事だから、折を見ては、コンサルタントやら企業の社長、各種士業の先生に本を書いてくれと頼みに行く。
けれど、僕が最近振られた著者は、そういった職業の人ではなく、まったく異分野の人である。
いままでビジネス書など書かなかった人なのだけど、彼の専門分野の話はビジネスにも生かせるところが多い、とふんで会いに行ったのだ。
彼が指定した喫茶店で、いくらかの世間話と専門分野の話を聞いた。
その話はめっぽう面白くて、またビジネス書としても全然いけそうで、僕は最後に、今日聞いたような話を、ぜひビジネス書として作らせてほしいと頭を下げた。
そして、あっさり振られたわけだ。
彼は言った。
「僕の専門分野の話を専門書として出すのなら、僕は喜んで受けます。
けれど、それをビジネスとか、自己啓発といった分野の本として出したいのなら、僕は断ります。
申し訳ないけれど、それは、僕がしたいことではない。他に適任の人がいるはずです」
僕はこの言葉を聞いて、編集者としては失格かもしれないけれど、素直に引き下がった。
残念だったけど、同時に、心からその言葉に納得してしまったから。
ここのところ、僕はよく、「したいこと」と「しないこと」を考える。
昔は「したいこと」だけ考えていたけど、歳をとったいま、むしろ「しないこと」についてよく考える。
人間、気がつくと、思った以上に、しなくてもいいことをやっている。
そのすべてが無駄だとは言わないけど、しなくてもいいことに時間を費やしすぎて、「したいこと」をやる時間がなくなっては本末転倒である。
だから僕は、何をしたいか以上に、何をしないかを考えるようになった。
僕が会いに行った彼も、「したいこと」と「しないこと」がハッキリ決まっていた。
したいことを悔いのないようにやり切るためには、しなくてもいいことは絶対しない。
その決意を僕は潔いと思ったし、「彼のしたいこと」をさえぎってまで「僕のしたいこと」を押し付けるのは、僕が「心からしたいこと」ではないと感じた。
本を作ることは叶わなかったけれど、一冊の本を一緒に作り上げる以上に、彼からは大事なことを学んだように思う。

