公務員の待遇は、異常なのか? 悲惨なのか?
2008年 06月 09日
(桜の咲く季節にいただいたのに、いまごろの紹介で申し訳ない…)
『公務員の異常な世界』
この本には、タイトルどおり、公務員の「異常」なまでの厚遇が書かれている。
その厚遇ぶりは、出版社といえども、(やたら給料の高い御三家と違って)しがない中小企業に勤めている僕には、にわかには信じがたいほどである。
だからこそ僕は、今回あえて、この本と対極にある本を(こちらは自腹で)購入した。
同じく新書で出ている、
『実は悲惨な公務員』
がその本である。
両書を読み比べて、公務員の待遇は「異常」なのか、思ったよりも「悲惨」なのか、自分なりの結論を出したかったのだ。
で、結論から先に言う。
公務員は、(民間の僕から見ると)やっぱり「異常」である。
ここでは一つだけ例を挙げる。
例が一つでは説得力に欠けるとは思うけれど、両書の一番対照的な面が出ていると思うので、お許しいただきたい。
『公務員の異常な世界』の中に、公務員宿舎の家賃の話が書いてある。
「〇七年に国家公務員宿舎使用料の引き上げがあり、おおむね一番新しい宿舎で標準の六三平米の規格なら、一応都内ではどこでもだいたい四万円という形になります」
これ、めっちゃ安くないですか?
事実、同書には、「都内の単身用の三〇平米未満のマンションの平均家賃」が「九万七五五〇円」と出ているぐらいである。
ところが、『実は悲惨な公務員』では、宿舎の話が「悲惨」なエピソードとして語られている。
同書によれば、公務員宿舎の4割前後が築30年以上のオンボロ物件であり、世間で言われるほど恵まれてはいないのだ、という理屈である。
しかしながら、同書にはそのオンボロ物件に住む公務員のこんな声も紹介されている。
「たしかに四〇平米強、2DKまたは3Kで月二万円しないのならば、どんなにボロくても受けいれなければいけないのでしょうね」
これ、いったいどこが「悲惨」な話なのだろう?
そもそも、宿舎というのは強制的に入らされるものではないはずだ。
二万円の家賃でも我慢できないぐらいボロい物件なら、即座に部屋を出て、「普通の家賃」のマンションに入ればいい話ではないのだろうか?
民間の宿舎とは無縁の中小企業のサラリーマンは、もっと高い家賃を払って、もっと狭い部屋に住んでいる。
僕も含めて、普通のリーマンからしたら、何を贅沢な悩みを言っているんだろう、と腹立たしいぐらいである。
残念ながら、『実は悲惨な~』の記述は、一事が万事、この調子である。
「僕らは世間が思ってるほどいい暮らしはしてませんよ~」というその暮らしとやらが、ごく普通の民間企業に勤めてる人間からしたら、十分「豊か」なのだ。
これを「悲惨」だと思うのは、当の公務員たちだけではないか。
最後に、言い訳ではないが、僕はこの記事で公務員批判をしたいわけではない。
僕が一言物申したいのは、たいして悲惨とも思えない暮らしぶりを「悲惨」と形容する本の著者であり、より根源的には、そういうタイトルを許容した(というか、多分、率先的につけた)光文社新書の編集者である。
*注:タイトルは著者・編集者主導とは限らないという指摘があるので、興味のある方はコメント欄をご覧ください
まあ、半期のボーナスが300万を超える光文社の編集者にとっては、こういう暮らしも「悲惨」なのかもしれませんけどね……