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ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha

働けば働くほど、わからないことが増えていく。(ヒトリゴト64)

最近、とくに深い理由はないのだけど、岩波新書を集中的に読んでいる。

何というか、最近の岩波新書には「当たり」が多いのだ。
今から紹介する本も、その当たりの一冊である。

疑似科学入門
*アマゾンに画像がないんで書名だけ。ていうか、アマゾン画像は必須でしょうが…

この本の内容については、疑う者を信じよ - 書評 - 疑似科学入門あたりでおさえてもらうとして、ここでは個人的に「なるほど」と思った言葉を引用しておく。
科学とは、知れば知るほどわからないことが増えてくるものである。自分は何も知らなかったと思い知らされるのが科学者の日常と言える。つまり、科学者は研究を極めれば極めるほど謙虚になる。自分の無知さを知って謙虚にならざるを得ないのだ。(同書190ページ)
この言葉、科学者だけにあてはまるものではないのではないか、と僕は思う。


恥を忍んでいうが、去年の今頃、僕は有頂天だった。

なぜかというと、作る本作る本がそれなりに売れて、会社では表彰されるし、ボーナスは予想以上に上がるし、仕事に関しては、まったく怖いものなしだったのだ。

嫌味な言い方をすれば、僕は「わかった」気になっていた。
売れる本の作り方、ひいては出版というものを「わかった」ように思っていた。


しかし、そういう状態は長くは続かない。

そのあと、売れる本も作ったけど、売れない本も何冊も作った。
あの「わかった」感覚は何だったんだろう、と我ながら不思議に思うぐらい、僕は「わからない」人に戻っていった。


そういう時期を経て、今の僕は、だいぶ謙虚になったと思う。

自分がわかったと思った感覚のほとんどが偽物であり、また、ある程度「わかった」状態の先には、もっともっと「わからない」ことが転がっていると気づいたから。

ベタなたとえでいえば、「初心者の山登り」みたいなものだ。
まるで、自分が汗水たらしてたどりついた頂上から、もっと高い山の頂が見えた感じ。


だから僕は、これからも新たな山の頂を目指して、謙虚に登り続けるだろう。
それは正直しんどいことだけど、同時にワクワクすることでもある。

今より高いところに登ったとき、いったい何が見えるのか、僕は今から楽しみにしている。
by aru-henshusha | 2008-06-09 01:13 | 不定期なヒトリゴト。