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ある編集者の気になる人・事・物を記録したブログ。ときおり業界の噂とグチも。


by aru-henshusha
「いい大学」を出ても「いい編集者」になるとは限らない。それでも、「いい大学」を受けたほうがいい理由。_c0016141_1411787.jpg公務員の待遇は、異常なのか? 悲惨なのか?で紹介した本と同じタイミングで、著者から献本いただいたのがこの一冊。

時間と学費をムダにしない大学選び

正直、高校生でも、受験生の親でもない僕にとって、あまり関係のない本かと思ったのだが、「入りたい業界別に大学受験別モデルプラン」を提示するという作りが、雑学的な好奇心を満たすという意味では、なかなか面白かった。

出版界の片隅にいる者として、「マスコミ業界」の章はじっくり読んだのだけど、中でもこの記述は気になった。
マスコミ業界は結果として東京大、京都大、早稲田大、慶応大を中心とする難関大出身者が多数を占めている。なぜか?
まず、どんなお題にも対応できる「優秀な学生」が難関大に多いということだ。難関大の学生は大学入試で難易度の高い問題を解くほどの能力を有しているので、採用後に今まで縁のなかった分野を任されても理解が早い、ということである。
もちろん、中堅以下の大学にもそうした学生はいる。しかしそれは少数派。さらにどういうわけか、難関大の学生のほうがマスコミ業界へのモチベーションが高く、自分からマスコミ就職に向けて動いていける人材が多い。これはマスコミ業界に就職した卒業生の多さが影響している。難関大では「ゼミやサークルの先輩がマスコミ業界にいる」ことが多く、彼ら彼女らの存在から、学生たちは自分の将来像を描きやすい環境にあるといえるのだ。(同書30P)
実際、マスコミ業界には(偏差値が高いという意味での)「いい大学」の卒業生が多い。
僕が勤めている出版社にも、僕の業界の友人にも高学歴の人間がごろごろいる。

ただし、先に言っておくけれど、「いい大学」を出たからといって「いい編集者」になるとは限らない。

仮に「いい編集者の条件」が、売れる本を作ったり、人の心に強く残る記事を書けたりすることだとしたら、それと「いい大学を出たということ」には、たいして関連性はないだろう。

難関大を出ても売れない本を作る人間はごまんといるし、記事の巧拙が偏差値の高低と連動しているとも思えない。


しかし、残念ながら、出版社(あるいはマスコミ各社)への就職を希望するなら、やはり「いい大学」に入るのに越したことはない。
それは、先述したように、採る側(出版社)は既に「いい大学」の人間であふれているから。

たとえば、(あくまで偏差値的に)「いい大学」と「そうでもない大学」の学生二人が、出版社の最終面接に残ったとする。

二人の能力やら人間的魅力にそれほど差がないとして、一人を選ばないといけないとしたら、このとき、「いい大学」出身の面接官(=経営陣)は、あえて「そうでもない大学」の学生を採用するだろうか?

これは推察に過ぎないけれど、やはり「自分たちと同じ、いい大学」出身の学生を選ぶのが人情というものではないか?

とくに、自分自身の学歴に誇りを持っているような人間であったのなら、なおさらである。


最初に書いたように、「いい大学」を出ることが、その人間の編集者としてのポテンシャルを保証するとは、僕には到底思えない。
(これは、他の職種についても同様である)

けれど、それをイコールだと考える人もいるだろうし(そのこと自体は考え方の相違で否定しないけど)、そういう人間が少なくなかったからこそ、出版界・マスコミ業界が「いい大学」出身の人間に席巻されるようになった部分もあるように思う。
*むろん、それ以外に「学閥」やら「人脈」の問題もあるだろうけど

採用側にも受験者側にも「いい大学」があふれる業界で、「そうでもない大学」出身ということはマイナスとまではいわないけど、決してプラスにはならないだろう。


以上の理由から、マスコミ業界を目指すなら、やはり「いい大学」に入るに越したことはない。

とはいえ、そういう僕自身は、じつは「いい大学」出身ではない(今回の本の受験モデルプランにも載っていない三流私大卒である)。

そんな僕が、高学歴の人間がごろごろいる今の会社に入ったいきさつは、かつて出版業界に入りたい人たちへ。という記事に書いた。

けれど、これはこれでかなり厳しい道のりだったから、そういった苦労をしたくないという人のために、今回の記事がある。


最後に、誤解されたくないので付け加えると、僕は「いい大学」を出なかったことも、かなりの「回り道」で出版社に入ったことも、後悔はしていない。

その過程で得たことが、僕のいまの本作りを支えているし、「いい大学」出身の人間が多い業界・会社だからこそ、彼らと違った目線を持っていることが、僕の武器だと思っている。


*当ブログへの献本は、以下のルールに則っていただける限り、歓迎いたします。
当ブログへの「献本ルール」を、ここらでハッキリ決めようと思います。
by aru-henshusha | 2008-06-16 03:37 | 本・出版
公務員の待遇は、異常なのか? 悲惨なのか?_c0016141_2352097.jpg今回取り上げるのは、知人を通じて著者から献本いただいた本。
(桜の咲く季節にいただいたのに、いまごろの紹介で申し訳ない…)

公務員の異常な世界

この本には、タイトルどおり、公務員の「異常」なまでの厚遇が書かれている。

その厚遇ぶりは、出版社といえども、(やたら給料の高い御三家と違って)しがない中小企業に勤めている僕には、にわかには信じがたいほどである。

公務員の待遇は、異常なのか? 悲惨なのか?_c0016141_23583618.jpgだからこそ僕は、今回あえて、この本と対極にある本を(こちらは自腹で)購入した。
同じく新書で出ている、

実は悲惨な公務員

がその本である。

両書を読み比べて、公務員の待遇は「異常」なのか、思ったよりも「悲惨」なのか、自分なりの結論を出したかったのだ。


で、結論から先に言う。

公務員は、(民間の僕から見ると)やっぱり「異常」である。


ここでは一つだけ例を挙げる。

例が一つでは説得力に欠けるとは思うけれど、両書の一番対照的な面が出ていると思うので、お許しいただきたい。


『公務員の異常な世界』の中に、公務員宿舎の家賃の話が書いてある。

「〇七年に国家公務員宿舎使用料の引き上げがあり、おおむね一番新しい宿舎で標準の六三平米の規格なら、一応都内ではどこでもだいたい四万円という形になります」

これ、めっちゃ安くないですか?
事実、同書には、「都内の単身用の三〇平米未満のマンションの平均家賃」が「九万七五五〇円」と出ているぐらいである。


ところが、『実は悲惨な公務員』では、宿舎の話が「悲惨」なエピソードとして語られている。

同書によれば、公務員宿舎の4割前後が築30年以上のオンボロ物件であり、世間で言われるほど恵まれてはいないのだ、という理屈である。

しかしながら、同書にはそのオンボロ物件に住む公務員のこんな声も紹介されている。

「たしかに四〇平米強、2DKまたは3Kで月二万円しないのならば、どんなにボロくても受けいれなければいけないのでしょうね」

これ、いったいどこが「悲惨」な話なのだろう?


そもそも、宿舎というのは強制的に入らされるものではないはずだ。
二万円の家賃でも我慢できないぐらいボロい物件なら、即座に部屋を出て、「普通の家賃」のマンションに入ればいい話ではないのだろうか?

民間の宿舎とは無縁の中小企業のサラリーマンは、もっと高い家賃を払って、もっと狭い部屋に住んでいる。
僕も含めて、普通のリーマンからしたら、何を贅沢な悩みを言っているんだろう、と腹立たしいぐらいである。


残念ながら、『実は悲惨な~』の記述は、一事が万事、この調子である。

「僕らは世間が思ってるほどいい暮らしはしてませんよ~」というその暮らしとやらが、ごく普通の民間企業に勤めてる人間からしたら、十分「豊か」なのだ。

これを「悲惨」だと思うのは、当の公務員たちだけではないか。


最後に、言い訳ではないが、僕はこの記事で公務員批判をしたいわけではない。

僕が一言物申したいのは、たいして悲惨とも思えない暮らしぶりを「悲惨」と形容する本の著者であり、より根源的には、そういうタイトルを許容した(というか、多分、率先的につけた)光文社新書の編集者である。
*注:タイトルは著者・編集者主導とは限らないという指摘があるので、興味のある方はコメント欄をご覧ください

まあ、半期のボーナスが300万を超える光文社の編集者にとっては、こういう暮らしも「悲惨」なのかもしれませんけどね……
by aru-henshusha | 2008-06-09 00:38 | 本・出版
売り出すことは簡単だ。でも、売り続けることは難しい。_c0016141_1473141.jpg献本がだいぶたまってるので、隙があればどんどん紹介していきます。

今夜紹介するのは、版元の方からいただいた、

駅弁スーパーレディ―駅弁女将細腕奮闘記

有名な駅弁の調製元の「女将」9名のインタビューが収められている本書は、<一風変わった駅弁ガイド>として楽しめそうです。

ただし、僕自身は、この本を「ものづくり」の書として読みました。


一日の大半を調理や販売に費やす女将たちの駅弁づくりにかける思いは、どれもとても熱いです。
中でも、「モー太郎弁当」をつくるあら竹の女将の言葉が特に印象に残ります。
現在、あら竹商店で扱う駅弁は、特別限定品の「極上松坂牛ヒレ牛肉弁当」まで含めると14種類。新作が出れば旧作はメニューからはずされると考えがちだが、中身やパッケージに多少の変更はあるものの、これまで発表してきた駅弁のすべてを味わうことができる。
「かつて家族旅行は列車で行くという時代がありました。お父さん世代は家族みんなで食べた駅弁の味を覚えていて、松坂までクルマで来てもわざわざ松坂駅の売店に立ち寄ってくれます。そんなとき、たとえば『元祖特撰牛肉弁当』はもう作っていませんとは絶対に言いたくないんです。あら竹の駅弁は、世代を超えて受け継がれていくものだと信じていますし、みなさんから支持される理由の1つには、古くなったからと製造をやめたりしない信頼感にあると思います」(同署125ページより)
僕は以前、多く売れるのが幸せか? 長く売れるのが幸せか?という記事を書きました。
本と駅弁では勝手が違うのは百も承知ですが、出版社(とりわけ、これほど出版点数が増えてしまった時代の出版社)にとって、長く売る・売り続けるというのが困難なことになってしまったものだなとは、よく感じます。

僕が勤めている会社も含めて、ある程度の規模の出版社は一年にやたらと本を出しますが、そのうちの大半は「売れないから」「古くなったから」と「製造をやめ」ることになります。
会社を維持していくのに仕方ないとはいえ、それが「ものづくり」として本当に正しい姿なのかどうかは、何ともいえません。

ものを売り出すのにもそれなりの苦労と困難があるけれど、本当に難しいのは、「売り続ける」ことではないかと僕は思います。

この本は、できればそんな困難も吹き飛ばして、長く長く売っていってほしいものです。
by aru-henshusha | 2008-06-03 02:33 | 本・出版
マニアは必見! 夕刊紙でおなじみの「三行広告」の正しい読み方。_c0016141_23223.jpg久しぶりの更新のしめは、最近多い献本ネタで。
(そもそも早く載せろとせっつかれて更新した部分もありますが……)

今回、著者じきじきに送っていただいた、

裏社会の歩き方

は、ヤクザ社会や非合法賭博、風俗産業などの実情が(比較的ライトなタッチで)描かれている本。

その中に、夕刊紙でおなじみの「三行広告」の解読法(?)が載っていました。
*参考:これが実際の三行広告です


見ておわかりのとおり、情報量が少ないので、読み方にはちょっとしたコツがいるのだとか。
そのコツを以下に公開します(同書211ページより再構成)

●「三行広告」の正しい読み方

ぽっちゃり、巨乳=デブ
熟女=40歳以上
*注:すなわち「ぽっちゃり、熟女」は「太った40歳以上」を指す
複=乱交系
N、安全日=膣内射精OK
単独、サロン=大人のパーティー
NK流=西川口流
ヒナ=若い女性

いやぁ、色々な「業界用語」があるものですね。興味のある方は参考にしてくださいませ。
ただし、何があっても自己責任で……。


=====Coming Soon!=====


これまで頂いた献本、すべて目を通しているのですが、なにぶん多忙なため、記事にする時間が取れません。
せめてもの罪滅ぼしとして、以下に今後紹介予定の本をリンクしておきます。

マニアは必見! 夕刊紙でおなじみの「三行広告」の正しい読み方。_c0016141_2574919.jpg駅弁スーパーレディ―駅弁女将細腕奮闘記
(アマゾンに画像がないですよ、担当者さん)
マニアは必見! 夕刊紙でおなじみの「三行広告」の正しい読み方。_c0016141_314872.jpg公務員の異常な世界
マニアは必見! 夕刊紙でおなじみの「三行広告」の正しい読み方。_c0016141_345955.jpg凶暴両親
マニアは必見! 夕刊紙でおなじみの「三行広告」の正しい読み方。_c0016141_392628.jpg時間と学費をムダにしない大学選び
それにしても、誰もビジネス書送ってこないのよねぇ。
僕の本業、ビジネス書編集者なんですが……。
(だから、よけい送りたくないのか?)
by aru-henshusha | 2008-05-30 03:14 | 本・出版
独身女子がマンション買うとお嫁に行ける、4つのワケ。_c0016141_2132824.jpg「おいおい、普通、独身女性がマンション買ったら結婚遠のくだろ~」
と見出しにツッコミを入れた人もいるかと思いますが、最近はそうでもないんだとか。

先日、担当編集&著者の方からいただいた、

開運!マンション選び*アマゾン、書影ないけど大丈夫ですか?

に「マンション買って結婚できた4つのワケ」が書かれていました。


以下に、その理由を要約してみます。

①結婚適齢期の男性の意識の変化
→昔の男性と違って、今の若い男性は女性がマンションを購入することに抵抗がない

②マンションを買ったことによる精神的余裕
→マンションを買った女性には「結婚したいオーラ」が少なく、男にプレッシャーがかからない

③マンションの立地・環境が出会いのチャンスを増やす
→独身女子は、渋谷や銀座、六本木よりタクシーで3000円程度の圏内にマンションを購入することが多く、遅くまで飲んだり、飲み会に途中から合流もしやすい

④新しい土地に移動し、住むことによる風水・気学的な運気アップ
→いままでとは違う方角、新しい土地のパワーがもらえる
(んだそうです。この手の話は、正直、苦手でして……)

というわけで、最初は半信半疑でしたが、本のなかの実録エピソードを読むと、この説、意外とアリかもと思えてくるから不思議です。

また、「売りやすく、貸しやすいマンションの条件」など、不動産投資を考える人にも役立ちそうな項目もあり、なかなか実用性の高い本に仕上がっています。

なお、貧乏独身リーマンの僕としては、マンション持っている独身女子の見分け方、も知りたかったりするんですが……
by aru-henshusha | 2008-05-08 22:12 | 本・出版
日本の「食」は安すぎる、日本の「本」も安すぎる?_c0016141_0422790.jpg1丁300円の豆腐、1個472円の納豆、700円以上の山菜そば……。
主婦の方はもちろん、一人暮らしの独身男性が見ても、これらの価格は高いと思うかもしれない。

かくいう僕自身も、きっとそう思ったことだろう。そう、この本を読むまでは。

日本の「食」は安すぎる

本書は、このブログがすごい!BLOGなどでおなじみの編集者・岡部敬史さんから送っていただいた。
本書の関連エントリー

多分、送っていただかなかったらスルーしてしまったジャンルの本なので、感謝している。


本書には、冒頭で取り上げた食品の「高いワケ」が余すところなく書かれている。
同時に、われわれが安い(あるいは適正だ)と思っている食品の「安いカラクリ」も書かれている。

個々の例については、ぜひ本にあたって読んでほしいが、思い切り大雑把に言ってしまうと、安い食品はそのぶん、「」や「鮮度」や「安全」を犠牲にしている。
また極端な例だが、安さの演出のために「偽装」がなされることもある。

生産者(または関連業者)の努力で価格を下げるにも限度があって、それ以下の安さを実現するためには、どこかにしわ寄せが行くのである。
それを承知で安さを求めるのは消費者の自由かもしれないが、どれだけの人がそのことを自覚しているのだろうか?

これは、「食」の価格に対して、あまりにも考えてこなかった僕自身にも言える。


ここで、話はちょっと飛ぶ。
僕はこの本を読んでいる最中、ずっと「本の値段」について考えていた。

本の値段に関しては、以前こんな記事を書いたことがある。

本の値段は、素人が思っているほど高くはない。

この件に関する認識は、いまでもそう変わらない。
しかし、本書を読んで思ったのは、これはあくまで「生産者」の意見だったなぁということ。


矛盾するようだが、本の「消費者」としての僕は、この本高いなぁと思うことがたまにある。

たとえば、1200円程度のビジネス書を読んで、「この本、何なの? 何も新しいこと書いてないじゃん」と、さも高い買い物をしたように感じるのだ。
(たとえ、それが原価的に見合った値づけであったとしても)

消費者としての僕は、もっぱら、「その本が僕にとって与えてくれるものの価値」と「その本の価格」を比べて、本を読んでいる。

だから、自分にとって価値がないと思った本は、造本的にどんなに適正な価格であっても、やっぱり「高い」のだ。

そう考えると、物の安い・高いは立場によって変わるし、だからこそ、色々なものさしにふれてみるべきではないかと、僕は思う。


う~ん、何だかまとまりのない話になったが、強引にまとめてしまおう。
最後に、この本の価格についてふれる。

本書の価格は、税込840円である。
(献本された僕が言うのも何だが)この値段は、僕とっては相当安い。

普段口にする食べ物を「安すぎる」と思ったことのない僕の価値観を、本書はグラグラと揺さぶってくれた。
僕にとって、その経験は、この価格の倍の値段を出してでも手に入れるべきものだった、と今ならいえる。

もちろん、これはあくまで、僕にとっての「安さ」である。
食に対する問題意識がもとより高い人にとっては、本書の内容はもしかしたら「高い」と感じるものなのかもしれない。

いずれにせよ、「高い」か「安い」か、書店で手にとって確かめる価値はある本だと僕は思う。

その価値を感じさせない「高い」本を、僕はここまで薦めたりはしない。
by aru-henshusha | 2008-04-22 01:28 | 本・出版
「正義」は怖い、何よりも。_c0016141_2235476.jpgこの本が出版社の方から献本されてきたとき、正直、「荷が重いな」と思った。

何せ、タイトルからして、

正義の正体

だもの。
普段、そういう小難しいことをほとんど考えない僕としては、全然的外れなことを書いて、馬鹿にされないか心配になった。
そして、その心配は、キーボードをたたいている今も変わらない。

でも、僕は書く。

外務省のラスプーチン」と「闇社会の守護神
――ともに、一見「正義」とは対極のところへ行ってしまった人たちが語る「正義の正体」を目の当たりにした今だからこそ、僕は僕なりに、力不足を承知の上で、「正義の正体」を追ってみたい。


本書の中盤(109ページ~)に、元検事の田中森一が、「自分の正義」を貫いた話が出てくる。

ある収賄事件で、不動産会社の社長を取り調べている最中、社長の妻が末期癌で危篤状態になった。
社長の弁護人から「一時間でも拘留を執行停止にして、最期を看取らせてやってほしい」という申請を受けた田中は、それを受け容れた。

しかし、彼の上司は、当初それを認めなかった。
「社会で働いていれば親の死に目に会えない、奥さんの死に目に会えないことなんていっぱいある。それでもみんな我慢して納得してマジメに生活しているんだ。嫁さんが病気だからといっていちいち執行停止なんかしていられるか」
この発言を受けて、田中はこう語っている。
上司の言うことが正義なのか。法律どおりやることが正義なのか。僕が一つだけ確信して言えるのは、当時も今もみんな法律というものに使われすぎてしまっているということ。雁字搦(がんじがら)めになっていると言ってもいい。検事は法の執行官なんだから、法律どおりにすべてのことを運べばたしかにそれで何の問題もないのかもしれない。しかし、それじゃ人としての血が少しも通わないし、誤解を恐れずに言うなら、面白みがないじゃない。うん、この言い方が一番しっくりくるな。僕は面白みがないと思うんだ。
けっきょく、社長の拘留は執行停止になり、4時間ばかりの奥さんの見舞いを終えた社長は、そのあと今まで否定していた贈賄について、すべて話したという。


田中の上司の考え方は、法の観点から見ても、検察庁という組織から見ても、一つの「正義」なのだろう。

じゃあ、田中がしたことは「不義」か? あるいは「悪」か?

くさい言い方になるけれど、僕は、田中のしたことは「人としての正義」だと思った。
それは、人間として血の通った、「もう一つの正義」ではないか?

「正義」とは、ときに、人の数だけ存在するものだと僕は思う。


もちろん、国家や組織の秩序を守るためには、そういくつも「正義」があっては困るだろう。
だから、法律や各種のルールで「正義」は規定されている。

だけど、それをガチガチに運用し続けると、どこかで「窮屈」になるときが来ると思う。
田中の言う「面白み」がない世界は、「正義」というものに縛られた窮屈な世界にならざるを得ないはずだ。


同時に、「一つの正義」が横行する世の中では、それ以外の価値観が徹底的に切り捨てられる危険性もある。

僕が敬愛する書き手、山本夏彦氏の本に、こんな言葉があったのを思い出す。
善良というものは、たまらぬものだ。危険なものだ。殺せといえば、殺すものだ。(『毒言毒語』134ページ)
この「善良」は、そのまま「正義」に置き換えることもできるのではないだろうか?

なぜなら、特定の「正義」の名の下に動いている組織・人間ほど、ときに恐ろしく暴力的になるものだから。

「正義」は、ときに、人の情や判断力を麻痺させる。
その意味で、僕は「正義」を、何よりも怖いと思うことがある。


長々書いてきたけれど、冒頭で述べた心配は、今だ解消されてはいない。

僕なりに考えた「正義の正体」は、しょせん、僕だけの正義をもとに作り上げた虚像かもしれないし、何より、自分の考えが正しいと言い切る気も毛頭ない。

きっと、僕には僕の、あなたにはあなたの、「正義の正体」があるのだろう。

ただし、その正体を知りたい方は、今すぐ本書を読んだほうがいいことだけは、疑いようがない。
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by aru-henshusha | 2008-03-31 02:31 | 本・出版
サラリーマン・ブロガーが気をつけたい、2つの「法律違反」。_c0016141_23532612.jpg先日、中経出版さんから4冊献本いただいたと書きましたが、そこで紹介していなかった最後の一冊をご紹介。

一問一答3秒でわかるコンプライアンス
*アマゾンに書影ないけど、大丈夫ですか?→現在はバッチリですね

「コンプライアンス」はよく「法令遵守」と訳されていますが、企業が経営・活動を行う上で、法令や各種規則などのルール、さらには社会的規範などを守ること、を指します。

この本では、そのコンプライアンスをクイズ形式で学べるというわけです。


本の中には70問のクイズが収められていますが、僕が気になったのは以下の2問。

Q34 会社で個人のブログを更新した


→どうなる!?
A懲戒処分の可能性がある
B懲戒処分にならない


Q36 ブログに新製品の開発ウラ話をのせた


→どうなる!?
A懲戒処分の可能性あり
B懲戒処分の可能性なし


さて、これらの答えは、どちらも「A」。

詳しい解説は本文にあたってほしいいのですが、勤務中のブログ更新は「職務専念義務違反」「不正使用」などにひっかかるし、裏話として社外秘の情報について書いた場合は「守秘義務違反」にあたるのだとか……。

当ブログ、コンプライアンス的にちょっと問題ありそうですね……。
以後気をつけますので、なにとぞお目こぼしを。
by aru-henshusha | 2008-03-31 00:11 | 本・出版
先日、中経出版の方から一気に4冊本をお送りいただきましたが、「ネタ」にするのは1冊にしぼりましたので、他の本を先にご紹介。
(「ネタ」は土日にアップします。本がらみじゃないやつも土日にアップ、できるはず……)

【献本】ぼく、オタリーマン。3 /あなたが変わる「話し上手」の法則/御社のホームページがダメな理由_c0016141_21484542.jpg1冊目は、『ぼく、オタリーマン。3』。

ダンカン。という個人サイトをやられているSEさんのコミックエッセイ。
タイトルどおり、「オタ」な「リーマン」の冴えない(失礼)日常が書かれており、クタクタになった帰りの通勤時間に読むと泣けます……。

ところで、中経出版さんはこのシリーズのヒットもあって、マンガを強化するみたいですね。
いつの間にか、メディアファクトリーみたいなサイトを作っていてビックリしました。

ネットで、本で、楽しくまんが。コミックゾーン


【献本】ぼく、オタリーマン。3 /あなたが変わる「話し上手」の法則/御社のホームページがダメな理由_c0016141_2159154.jpg2冊目は、『あなたが変わる「話し上手」の法則』。

じつは、いただいた本の中で一番「使える」と思った本です。
(じゃあ、何でネタにしないんだという話ですが、使えるのとネタにしやすいかどうかはまた別なので……)

たとえば話し上手になるための「型」として紹介されている、

・PR法(ポイント・意見→理由の順で話す)
・PREP法(ポイント・意見→理由→具体例→ポイント・意見の順で話す)
・SDS法(全体→詳細→全体の順で話す)

を覚えるだけでも、だいぶ違うのではないかと。内容はかなり絞り込まれていますが、良書です。

【献本】ぼく、オタリーマン。3 /あなたが変わる「話し上手」の法則/御社のホームページがダメな理由_c0016141_2295340.jpgさて、最後に紹介するのは、『御社のホームページがダメな理由』。

この本については、じつは某書評ブログが詳細に取り上げていたので、そちらを読んでいただいたほうがいいかと(楽してるわけじゃないですよ……)

【衝撃?】「御社のホームページがダメな理由」竹内謙礼(マインドマップ的読書感想文)

リンク先で書かれているように、うまくいかないネットビジネス&企業サイトの「ダメな理由」が書かれていて、なかなか面白いです。

ただ残念なのは、僕自身、じつは過去にネットビジネスの本を手がけて、類書を読み込んでいたこともあって、知っている内容も多かったんですよね。

しかも、同じ著者の他の本とかぶってる内容もままあり、そこはどうなのかなと……
(いかにも、同業者の視点ですが)

個人的には、本後半の成功事例がもっとあるほうが「使える」本になったと思います。
まあ、ここらへんは各編集者の本づくりのスタイルによって、考え方は違うでしょうが。

では、今日はここまで。明日or明後日には、本格的に更新できる、はず……
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by aru-henshusha | 2008-03-28 22:20 | 本・出版
先日、生まれて初めて、ケータイ小説を読んだ。
できることなら、この手の本とは一生無縁でいたかったが、知人を通じて発行元から献本されてしまった以上、しかたがない。

このケータイ小説は、しっかりと太陽の方を向いている。_c0016141_2344885.jpgこのケータイ小説は、しっかりと太陽の方を向いている。_c0016141_23444431.jpg
俺はお前を一生愛す [上]俺はお前を一生愛す [下]

上下巻あわせて500ページ近くもあるこの本を、休みも使って読ませてもらった。


この本は、ケータイ小説としては、比較的「読める」ほうだとは思う。

意外と言っては失礼だが、文章には編集者や校閲者がしっかり手を入れた跡がうかがえる。
また、サクラとかアサガオとか名づけられた各章は、それぞれの「花言葉」と関連した内容になっており、コワザが効いた構成だ(ちなみに作者の名前も「花穂」という)。


けれど、それはあくまで「ケータイ小説として」の話である。

僕は数多く小説を読むほうではないけれど、それでも、これまでに読んできた小説と比べて、この作品は内容としても表現としてもあまりに幼い。

「ケータイ小説=すべての小説」といった一部の若い子にはこれでもいいのだろうけど、僕ぐらいの年齢(って、明かしていないか)になると、残念ながらかなり厳しい。

そこは献本者の方も、正直、送り先を考えたほうがいいと思う。


ただし、僕はこの本をまったく評価していないわけではない。
僕は、この本の「姿勢」には、ひそかに共感している。


僕は以前、人気ケータイ小説が今すぐ書けるようになる、7つの魔法のキーワード。という記事の中で、人気ケータイ小説に共通する、7つのキーワードを挙げた。

そのうちの6つ、すなわち「①売春②レイプ③妊娠④薬物⑤不治の病⑥自殺」は、あまりにも暗い要素である。

多くのケータイ小説は、これらが重なって織り成す暗闇に、最後、「⑦真実の愛」が一条の光となって差し込む、という構成をとっている。


しかし、この本『俺はお前を一生愛す』は、できるだけ上記の要素を排除しようとして書かれている。

実際には、レイプ未遂の描写やら薬物使用の描写は出てくるのだけど、それらはストーリーの展開上、必要最低限の記述がなされるだけで、これら「小道具」のためにストーリが存在するわけではない。
(注 そもそも、この作品がライブドアパブリッシング大型新人賞を受賞するにあたって、上記の要素を扱わないというのが選考基準だったらしい→参考:ケータイ小説出版までの作業

だから、この本の後味は、他のケータイ小説とは、かなり違うものになっていると思う。
それは、この作品の登場人物の多くが、本当は優しく、恋人や友達を大切にする人物として描かれていることにも関係があるはずだ。

この小説は、人や世の中の暗闇を描くことより、光と暖かさを描くことに、より力を入れている。
その「姿勢」を、僕は買う。


僕の、数少ない好きな小説家の一人、北村薫の作品にこんな言葉がある。
いいかい、君、好きになるなら、一流の人物を好きになりなさい。――それから、これは、いかにも爺さんらしい台詞かもしれんが、本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ(『朝霧』40ページ)


このケータイ小説は、しっかりと太陽の方を向いている。

もちろん、太陽もあれば暗闇も月もあるのが僕らの生きている世界だけど、ケータイ小説という、ともすれば暗闇をクローズアップしすぎる表現ジャンルにおいて、この作品の「姿勢」は貴重である。

こんなことを書くのも、僕が年々「爺さん」に近づいている証拠だろうか。


*当ブログへの献本は、以下のルールに則っていただける限り、歓迎いたします。
当ブログへの「献本ルール」を、ここらでハッキリ決めようと思います。
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by aru-henshusha | 2008-03-23 23:55 | 本・出版